ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた美しい写真…画像処理専門家が明かす、その舞台裏(海外)

AI要約

ジェームズ・ウェッブ望遠鏡は、宇宙のさまざまな領域を撮影し、その写真を芸術作品にするために画像処理が欠かせない。

JWSTの未処理の写真から、専門家が細部を引き出すためには多くの作業が必要であり、デパスケールの貢献が大きい。

JWSTの画像処理には多くの時間と手間がかかるが、その成果はきらめく銀河団の美しいポートレートとして表れる。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた美しい写真…画像処理専門家が明かす、その舞台裏(海外)

ジェームズ・ウェッブ望遠鏡は、きらめく「星のゆりかご(星団が形成される領域)」から、彼方の銀河団まで、膨大な数の宇宙写真を撮影している。

だが、そうした写真を芸術作品にするためには、ジョー・デパスケールのような画像処理の専門家が必要だ。

「ディープフィールド」や「タランチュラ星雲」のような画像がどう生み出されているのか、その舞台裏をデパスケールが語ってくれた。

米航空宇宙局(NASA)は2年前の2022年7月12日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影した最初のフルカラー宇宙写真を公開した。

JWSTの宇宙画像を研究する科学者と、そこから発見された知見の話はよく耳にするが、そうした美しい芸術作品の裏には、1枚の画像の加工に何日も、ときには何週間も費やすジョー・デパスケール(Joe DePasquale)のような画像処理の専門家がいる。

JWSTが撮影した未処理の画像は、地球に送られてきた時点では、何もない黒い四角のように見える。そこから最も重要な瞬間を拾い出すためには、科学と直観、そして場合によっては若干のフォトショップ加工が求められるとデパスケールは話す。

デパスケールは、宇宙望遠鏡科学研究所の科学ビジュアル開発責任者だ。最初期のJWST画像の一部を処理し、世間の人々が見られるようにする仕事にも携わった。

画像を処理していくと、ときにデパスケール自身をも驚かす細部が少しずつあらわになっていく。JWSTの最初期の画像のひとつ、「ディープフィールド(Deep Field)」では、中央にあるいくつかの銀河を取り囲む小さな点を目にして仰天した。その点々は、極めて遠くにある銀河を取り巻く、恒星の球状星団だったのだ。

「このほんの小さな空の一部から、これほどの細部を引き出して、これほどはっきり見えるなんて、驚きでした」とデパスケールは語る。

2021年のJWST打ち上げの後の数カ月は、「どうしようもなくハラハラしていた」とデパスケールは話す。JWSTが宇宙の果ての撮影を開始するためには、宇宙空間で展開し、完全な配置にしなければならない。

「途中のすべての段階を注視していました。主鏡の展開、サンシールドの展開など、起きることをひとつ残らずです。何かがうまくいかなかったら、望遠鏡全体が単なるがらくたになってしまう、という失敗の可能性のポイントが300もありました」とデパスケールは言う。

JWSTは完璧に展開され、無事に広大な宇宙の撮影にとりかかった。1枚のJWST画像は、何千もの銀河をとらえている。先に紹介したディープフィールド画像のように。

未処理のJWST画像から細部を残らず引き出すのは、簡単な仕事ではない。最終的にできあがる写真は、実際には4枚の画像をつなぎあわせたものだ。最初にその4枚を並べたとき、デパスケールは1枚1枚の明るさが異なっていることに気づいた。それを一致させるためには、フォトショップを使って、1枚1枚の明るさを手作業で調節する必要があった。

ディープフィールド画像では、処理の開始から完了までに2週間ほどかかったという。そうしてできあがったものが、銀河団「SMACS0723」のきらめくポートレートだ。