「怒られることもある」パリ五輪バスケ日本代表ホーキンソン選手が語るトムコーチとの関係

AI要約

ジョシュ・ホーキンソン選手がFIBAバスケットボールワールドカップ2023で複数部門でトップの成績を残し、日本代表として大活躍した。

ホーキンソン選手は、トム・ホーバスヘッドコーチの指導や日本リーグでのプレー経験などがチームへの適応をスムーズにした。

選手とコーチの厳しさやコミュニケーションを通じて、チームの成長と選手の最高のパフォーマンスを引き出す意義が語られている。

「怒られることもある」パリ五輪バスケ日本代表ホーキンソン選手が語るトムコーチとの関係

「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の公式サイトで個人のプレー成績をまとめたスタッツリーダーが発表された。そこで、複数部門で結果を残した日本代表選手がいる。それがワールドカップで初めて日本代表入りを果たしたジョシュ・ホーキンソン選手だ。

32カ国が参加するワールドカップで、2ポイントシュート成功率で世界1位(73.5%)、フリースロー成功数で世界4位(40本)、フリースロー成功率で世界10位(88.9%)、そして、チームの勝利にどの程度貢献したかを評価する指標「貢献度」で世界2位という成績だ。まさに “オールラウンダー”として、大会屈指の功績者だったと言える。

大学時代までアメリカでプレーをしていたホーキンソン選手は、2023年に帰化選手として日本代表に入った。208cmの身長で“オールラウンダー”として活躍する彼は 「日本バスケ界の救世主」と言われている。

そんなホーキンソン選手が執筆した書籍『日々挑戦、日々成長 - 不可能を可能にするメンタル強化メソッド -』(ワニブックス)では日本代表としての決意が綴られている。本書から抜粋してご紹介する前編では、NBAへの挫折と日本でプレーする理由をお届けした。後編では、ホーキンソン選手から見た日本代表について。トム・ホーバスヘッドコーチとの関係性や日本代表で目指すプレーについてお伝えする。

僕が日本代表に早い段階で馴染むことができた理由のひとつに、トムコーチの存在があります。帰化後、代表に招集されると彼は、僕がチームに加わったらどういったことをしてもらいたいのか、そしてチームのスタイルに僕がどれくらい合っているのかを、映像を見せながらとても熱心に説明してくれました。トムコーチが率いていた時代の女子日本代表の試合や、僕が加入する前の男子代表の試合の映像です。

僕の加入前のワールドカップ・アジア地区予選で、日本は中国に連敗したり、オーストラリアに力の差を見せつけられたりと苦しんでいました。個人的にそうした試合を見ながら、もし自分が入ったらどういう役割を担うのか、自分ならどう対応できるのか、強みをどう生かせるかなどと必死で考えていたのですが、トムコーチが映像を見せながら僕のすべきことを指示してくれたおかげで、よりはっきりとした形で理解することができました。

バスケットボールでは通常、新しいチームに入るとチームメートたちとの練習を重ね、時間をかけてケミストリーを高めていくものですが、トムコーチと映像を見るという作業のおかげで、さほど苦労をせず、短い時間でチームにフィットできたのです。

また、彼は帰化選手ではないものの、日本のリーグでプレーをした経験もあり、日本語を学んだということもあって、僕の立場などもわかってくれていましたし、同じアメリカ出身だということもあって、僕としては非常に接しやすいと感じています。信じられないかもしれませんが、トムコーチが日本語で話す時でも僕は彼の言うことがよく理解できます。おそらく、彼も僕も英語を母語としてきたため、考えることが近いところがあるのではないでしょうか。トムコーチは英語で話すにしろ、日本語で話すにしろ、指示がとても明瞭です。

もちろん怒られることもあります。というよりも、彼は選手によって態度を変えるコーチではありませんし、良くないプレーをすればそれを正すために声を荒らげて叱ることをためらいはしません。そして、怒られることは選手にとって悪いことではありません。もしコーチが選手に話しかけることをやめてしまったら、それはその選手が期待をされていない証拠だからです。

トムコーチをはじめ、コーチたちが選手たちに対して怒りを表したり、厳しい言葉を投げかけたりするのは、外野からは怖く見えるかもしれませんが、選手の最高の姿を引き出すために、ひいてはチームをより良くするためにあえてそうしているのです。ですから、コーチが選手に声を荒げてでも何かを伝えてくるのは、重要なコミュニケーションなのです。