新型ゲーム機「ROG Ally X」レビュー:処理速度やバッテリー持ち、操作性など

AI要約

ROG Ally Xは、Windowsベースのハンドヘルドゲーム機で、高価格ながらベストな部類と評される。ただし、Windowsの操作性やゲーム制限などには注意が必要。

ゲーム機としての規格に合わせた設計や性能向上、大容量バッテリー、優れたパフォーマンスを持つが、高解像度の外部ディスプレイへの接続などに制限がある。

汎用性の高いWindowsゲーム機としてROG Ally Xは魅力的だが、価格や操作性の面で購入を検討する際には検討すべき点が多い。

新型ゲーム機「ROG Ally X」レビュー:処理速度やバッテリー持ち、操作性など

 「ROG Ally X」(アールオージー エイライ エックス)は、はるかに低価格の「ROG Ally」(499.99ドル、日本では税込み8万9800円から)のアップデート版で、玉石混交の「Windows」ベースのハンドヘルドゲーム機の中で基本的にはベストな部類とみなされている。競合製品には、「Lenovo Legion Go」や「MSI Claw」などのよく知られたモデルのほか、主に米国外で販売されている多数の製品も含まれる。ただし、ROG Ally Xは799.99ドル(同13万9800円)と比較的高価なので、デザイン面で多くの改善が施されていたり、パフォーマンスも向上したりしてはいるものの、購入をためらう人もいるのも納得できる。

 多かれ少なかれOSによってプレイできる作品が決まるゲーム機というカテゴリーにおいて、Windowsには、良い面もあれば悪い面もある。一方で、Windowsの場合、「Epic Games Store」や「Xbox Game Pass」「Steam」などのWindowsベースのプラットフォームを使用して、PC向けに提供されているあらゆるゲームをプレイすることができる。つまり、ユーザーは考えられる中で最大のゲームライブラリーにアクセスすることができるというわけだ。

 対照的に、「Nintendo Switch」で遊べるのはSwitchのゲームだけだ。「Steam Deck」でプレイできるのはSteamのゲームだけだし(改造すれば非対応のゲームをプレイすることもできるが)、「PlayStation Portal」では、「PlayStation 5」(PS5)にインストールされたゲームしかプレイできない。「Logitech G CLOUD」でも、プレイできるのはクラウドゲームと「Android」ゲームだけだ。

ASUS ROG Ally X

レビュー時の価格799.99ドル(日本では税込み13万9800円)

ディスプレイ1920×1080ピクセルのIPS、sRGB 100%、500ニト、120Hz、「FreeSync Premium」

CPUAMD Z1 Extreme

メモリー24GB LPDDR5X-7500(CPU用16GB/iGPU用8GB、調整可能)

グラフィックスAMD Radeon 780M(CPUに内蔵)

ストレージ1TB(M.2 2280)、microSDスロット

ポートDP 1.4、PD 3.0対応USB-C×2(USB 4×1、USB 3.2×1)、コンボオーディオ

ネットワークWi-Fi 6E、Bluetooth 5.4

OS「Microsoft Windows 11 Home 64ビット」

重量678g

 しかし、その一方で、Windowsは小さなディスプレイには適しておらず、ゲーム機のようにスムーズに操作できるようにスキンを変更することも容易ではない。ゲーム機が悪いために怒りにまかせてプレイをやめるのは、十分にいら立たしいことである。よく分からないボタンをうっかり押してしまい、Windowsやゲームのプラットフォームアプリから何度も追い出されたことに腹を立ててプレイをやめるのは、全く別次元のいら立たしさだ。ほかのコントローラーやデバイスから乗り換えたときは、4つのメニューボタンに暗闇で光るインクや派手なラベルで印を付けると、誤操作を最小限に抑えることができる。インクが消えるころには、それらのボタンの機能を記憶しているはずだ。

 コンパクトなタッチキーボードを使っている場合でも、入力しようとしているフィールド(メールアドレスやパスワードなど)がブロックされることがある。筆者の場合、我慢の限界に達したら、キーボードやマウスをBluetoothで接続していた。一番良い解決策とは言えないが、いら立ちを大幅に抑えることはできた。MSI Clawのテストを開始したばかりの筆者からすれば、ROG Ally Xは間違いなく合理的なデザインになっていると思う。

 もう1つ注意点がある。このようなWindowsベースのハンドヘルドゲーム機はすべて統合グラフィックスチップを使用しているため、プレイできるゲームとプレイ品質が制限されてしまう。ROG Ally Xの画面解像度(1080p)でも、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「Horizon Zero Dawn」などの古いAAAゲームは、画質を大幅に下げることなく、60fpsを大幅に下回るフレームレートで動作する。そのため、1080pを上回る高解像度の外部ディスプレイに接続したいのなら、ROG Ally Xは良い選択肢ではない。

 ただし、もっとライトなゲームをプレイしたいのなら、ROG Ally Xは驚くほど優れたパフォーマンスを発揮する。そのパフォーマンスは、グラフィックスを内蔵したAMDの「Ryzen 7 8840HS」を搭載した低消費電力ノートPCに匹敵し、「Hades 2」では、200fps以上のフレームレートをほぼ維持できた。また、「Adrenalin」ドライバや、「FidelityFX」をサポートするゲームで、AMDの最適化テクノロジーを有効にすれば、パフォーマンスを向上させることも可能だ。

 ROG Allyと同じAMDの「Z1 Extreme」プロセッサーを採用しているにもかかわらず、ROG Ally Xが高速なのは、より大容量かつ高速なメモリー(そのうち8GBはデフォルトでiGPUに割り当てられている)、より高速なSSD(「3DMark Storage」ベンチマークでは63%高速だった)、ACアダプター非接続時の各オペレーティングモードの消費電力の引き上げ(例えば、パフォーマンスモードで15Wから17Wに増加)などのアップグレードのおかげだ。

 初代ROG Allyについては、バッテリー持続時間のテストはしていなかったものの、ROG Ally Xのバッテリー容量は初代の2倍(40Whから80Wh)で、「Hades 2」や「Have A Nice Death」、クラウドゲームの「Flock」や「Maquette」といったゲームやライブラリーサーフィンを約4時間にわたって楽しむことができた。3時間半ほどが経過したところで、寝る時間になったが、そのときのバッテリー残量は9%だった。素晴らしいとは言えないが、ひどいわけでもない。なお、充電時の電力も100Wに増えたにもかかわらず、同梱されているのは65Wの充電器だ。

 冷却システムもアップデートされており、デバイスの表面温度が低下しているが(バッテリー駆動時の動作音は以前ほど静かではない)、本体上部から空気が出てくるのを感じることが時々あった。また、背面の表面はそれなりに熱かった。

合理的なデザイン

 筆者の個人的な好みをいくつか述べておこう。グリップにテクスチャーが追加されて握りやすくはなったが、プラスチック製なのは変わらない。筆者はもっとゴムのような感触のグリップが好きだ。各種ボタンにも修正が加わっている。十字キーは8方向になり、ABXYボタンも「より触感の高い」ものになっている。しかし、十字キーやボタンはどれも筆者には少し柔らかく感じる。

 もっといら立たしいのは、ABXYボタンが真ん中を押さないと反応しないように思えることだ。最初のうちは、ダッシュ攻撃(A+X)をするときに、この操作性が問題になった。Steam Deckでは、端の方を押しても、問題なく反応する。重大な問題ではないが、手の位置を調整する必要があった。また、ほとんどのトリガーと同様、ROG Ally Xのトリガーも比較的深く引くことができる。筆者は、トリガーをサッと浅く引くだけで反応するようにしてくれるトリガーストップが好きだ。

 逆に、バンパーのクリック感は気に入っている。本体のサイズはSteam Deckより少し小さいが、筆者の手には合っている(参考までに、筆者の手袋のサイズは女性用の7だ)。グリップのテクスチャーについては不満な点もあるが、かなり快適に使用できる。背面のパドルは誤操作を減らすために小型化しているが、このサイズと感触は気に入っている。

 注目すべきは、外付けGPUの「ROG XG Mobile」用とUSB-C用が一体となったコネクターが廃止され、外付けGPUをサポートするUSB-C 4.0ポート1基と、USB-C 3.2ポート1基を採用したことだ。

 残念なことに、ディスプレイはアップグレードされていない。ROG Ally Xのディスプレイは1080pで、わずかに大型化している。初代モデルよりも適度に明るくなったり暗くなったりする。しかし、筆者はSteam Deckの高コントラストのHDR対応有機ELディスプレイに慣れてしまっている。ただし、ROG Ally Xの画面の反射は最小限に抑えられている。これはうれしい。

 「Armoury Crate SE」とそのスキンおよびユーティリティーソフトウェアについては、ASUSを称賛しなければならない。同社の「ROG」ノートPCに搭載されているフルの「Armoury Crate」は好きではない。設定を変更する場所が分かりにくくて混乱することが最大の理由だ。SEは、より小さいディスプレイでの使用を想定して設計されており、Armoury Crateよりも扱いやすいが、それでも少し分かりにくい。ユーザーは、ゲームパッドとデスクトップモードのコントロールの設定や照明コントロールなどの基本的な機能に加えて、ファンと電源の設定を手動で調整したり、iGPUに割り当てられるメモリー容量を変更したり(ただし、この機能はまだテストしていない)することもできる。

 価格の高さ、ゲーム機のようなプレイ感をWindowsに移植することに伴う問題、特に今から数年後に、特定のゲームがどれだけ快適に動作するのか分からないことなどを考えると、ROG Ally Xについては、条件付きでお薦めすることしかできない。Lenovo Legion Goは、ROG Ally Xよりもわずかに低い価格で、ハードウェアの柔軟性は勝っているが、ある意味では過剰設計である。初代ROG Allyは著しく動作が遅いが、著しく低価格なので、レトロゲームをプレイしたい人にはうってつけかもしれない。筆者はROG Ally Xを気に入っている。Steam以外の低~中負荷のWindowsゲームをプレイしたいと思っており、799.99ドルを払う余裕があるのなら、おそらく最適な選択肢だろう。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。