異常すぎる近年の気候変動に、それでも「グリーンテック」がまだ有効でない“3つのワケ” 「削減できる二酸化炭素の量より排出する量のほうが多くなってしまう」

AI要約

地球の気候変動への対策として注目されるグリーンテックについて、地政学ストラテジストの意見が示されている。

現代のグリーンテックは、地理条件によっては実用的ではない場所も多く存在し、環境的・経済的に効果が薄いという指摘がある。

風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、一部の地域にのみ適しており、世界の大半で有効ではない現状がある。

異常すぎる近年の気候変動に、それでも「グリーンテック」がまだ有効でない“3つのワケ” 「削減できる二酸化炭素の量より排出する量のほうが多くなってしまう」

近年、地球を襲う気候変動。二酸化炭素排出をおさえるために注目されているのが、グリーンテックだ。グリーンテックとは、再生可能エネルギーなど持続可能な社会を実現するための資源や環境に配慮したテクノロジー、またはサービスを指す。しかし実際にはさまざまな理由から難しいのではないかと述べるのが、地政学ストラテジストのピーター・ゼイハン氏だ。はたして、その真意とは?

『「世界の終わり」の地政学 野蛮化する経済の悲劇を読む 下』より一部抜粋、再構成してお届けする。

個人的な話をすると、私は以前テキサス州オースティンに住んでいて、いまはコロラド州のデンバー郊外で暮らしている。どちらの家にも太陽光発電装置を設置した。

暑くて日差しの強いテキサスでは、8年足らずで投資分を回収できた。コロラド州ならもっと早く回収できるだろう。

デンバーはアメリカの都市圏のうち最も日照時間が長く、標高が高いので湿気によって太陽光が遮られることはない(空気が薄く、水分や塵が邪魔しないのも有利だ)。私は、正しい地理的条件にマッチした場合のテクノロジーの力を強く信じている。

ただし、そんな「正しい」地理条件というものは多くない。

世界のほとんどの場所は、風も日差しもそれほど強くない。カナダ東部とヨーロッパ北部・中部の空は1年のうち9カ月以上も雲に覆われ、さらに冬の日照時間はひどく短い。フロリダやブラジル北部にカイトボーディングをしに行く人はいない。

中国の東部3分の2、インドの大部分、東南アジアのほぼ全域では、太陽光発電と風力発電の可能性はほとんどない。そこには世界人口の半分が住んでいるのに。その地域に大規模にグリーンテックを導入しても、削減できる二酸化炭素の量より排出する量のほうが多くなってしまうだろう。西アフリカも同様だ。アンデス山脈北部も。旧ソ連圏のうち人口が多い地域も。カナダのオンタリオ州も。

現代のグリーンテック導入が環境的にも経済的にも理にかなっている場所は、人が住める大陸の面積の5分の1にも満たず、しかもほとんどは主要な人口密集地から遠く離れている。

風力発電なら南米のパタゴニア地方、太陽光発電ならオーストラリアのアウトバック地帯を思い浮かべてほしい。残念な事実だが、現在のグリーンテックはほとんどの場所のほとんどの人々にとって役に立たないのだ──二酸化炭素排出量の削減にも、「秩序」崩壊後の混沌とした世界における代替エネルギーとしても。