メガソーラー火災の不安訴える住民に「水かけますから」…ゴルフ場続ける約束を反故にされた宮城県・加美町長が激白/シリーズ『ゴルフ場減少時代』

AI要約

梅雨前線が日本列島に居座った7月某日、取材班はレインウエアに身を固めながらゴルフ場の状況を目撃し、その後温浴施設に直行した。

ゴルフ場の経営者が問題を無視し、石山町長を含む関係者が再生可能エネルギー事業に真摯に向き合っている様子が報じられる。

メガソーラー施設の火災や廃棄物問題など、再生可能エネルギー事業に伴う懸念が議論される一方、国の再エネ制度設計にも疑問が投げかけられる。

メガソーラー火災の不安訴える住民に「水かけますから」…ゴルフ場続ける約束を反故にされた宮城県・加美町長が激白/シリーズ『ゴルフ場減少時代』

 梅雨前線が日本列島に居座った7月某日。レインウエアに身を固めながら全身ずぶぬれになった取材班は、「やくらいサイズゴルフ倶楽部」(宮城県加美町)でのラウンドをハーフで取りやめ、近くの温浴施設に直行しました。ホールアウト後にシャワーすら浴びられないのでは、体調を崩してしまう危険性を自覚したからです。

 土がむき出し、刈り込むことすらできないグリーンは、どちらに跳ねるか分からずまったく楽しむことはできません。このコースの経営者は、訪れたゴルファーたちを落胆させることに何の痛痒も感じていないのでしょう。これが11月に30年の歴史を閉じるゴルフ場の断末魔のようにも思えました。

 この日の朝刊には同ゴルフ場のトラブルが大きく報じられていました。多くの町民もこれを目にしており、ゴルフ場の転売に関わる関係者に対して疑惑の目が向けられているのがハッキリと伝わってきました。そもそも、この後インタビューする石山敬貴町長は、昨年8月の町長選挙で風力発電事業の拡大に反対を唱えて当選した人物。就任して間もなく、今度は太陽光発電という、これまた再生可能エネルギーの新たな問題に直面しているわけです。

 果たしてゴルフ場は存続できるのでしょうか。キーマンである石山町長がこの問題とどう向き合うのか、じっくり聞きました。

【石山町長と一問一答】

――私も40年以上この世界で記事を書いていますが、正直、こんなにとんでもない事例は初めて聞きました。

石山 ゴルフ場を運営すると言いながら、悪く言えば、お金儲けのために「田舎町だからどうせ分からない」との考えで利得を得ようとするようなことを許していいのかという問題です。今の太陽光とか風力とか、再エネが様々なところで問題になっていること。加美町という田舎町のことではあるけれど、同様のことが全国各地で起きている。今の日本社会に一石投じられるようなことじゃないかと思うんです。

――ここに来る前に反対派の方に取材したんですが、「私たちが引き継いだこの自然を、子どもたちに引き継いでいかなきゃいけない。それが厳しくなって大変なことになっているということを、全国に発信していただければありがたい」とおっしゃってました。

石山 自分も去年「風力ダメだよ」って掲げて当選し、今回も太陽光のことだから、世間から再エネ反対首長みたいに思われてるんですけど、そうじゃない。風力だって、太陽光だって、ルールをきちんと守って作れば再生エネルギーとなるわけです。単にFIT価格(固定価格買い取り制度)に群がって、国民からは再エネ発電賦課金を取って、それを会社に吸い取られるのを見てしまいますと……。

――そうですね。宮城県内では西仙台CCの27ホールのうち9ホールに転用されたメガソーラー施設が火災を起こしましたよね。もし山火事になって延焼してしまった場合にどうするんだっていう話も多分あるでしょうし、廃棄の問題も含めて、いろんな懸念があると思うのですが。

石山 火事があった以降の住民説明会で「(やくらいサイズGCからメガソーラー施設に転用された場合)ああいうことが起きたらどうするんですか?」と質問が出たんです。そうしたら「水をかけますから」とか「消防署に連絡します」とか答えていました。しかし残念ながら、ああいう火事に対応する消防ポンプ車をこの地域は持ってないんです。ですから「そういうことも分からないで作ろうとしているのか?」という住民の声があるのも当然です。消火設備そのものをちゃんと作ってからやってもらわないと、という話にもなります。

――西仙台のケースでは、日中の間は発電してしまうため感電の危険があり放水ができなかったそうですね。仙台市の消防局に取材したところ、すでに3カ月が経過しているのに、いまだ「調査中」ということで、原因もまだ分かっていないとのことでした。火災もそうですが、廃棄の問題などいくつも心配の種がありますよね。

石山 今年みたいに雪が少なければいいですが、あそこは例年2メートルから3メートルぐらい雪が積もるところなんですよ。やくらいゴルフ場を積水化学(工業)がやっていたときは、大手資本ですからすごくきれいに管理されていたんですが、一番ネックだったのは、冬場はプレーできない場所だということ。太陽光にして(パネルが)雪の重みで潰れていったらどうするのか。

――それは心配ですね。

石山 設置後に転売されることも心配している。悪質な業者になれば、20年後に廃棄物の山が残されてしまう。

――20年って長いようで短いですよね。

石山 短いですよ。だから風力も太陽光も20年という国のたまたまの制度に乗っかってやっている事業なんて、僕はやっぱり事業じゃないと思うんですよ。風力にしても、太陽光にしても恒常的にやるわけではない。これは事業者が悪いとか、再エネが悪いとかっていうことではなくて、やっぱり国としての再エネの制度設計に問題があるのかなって思わざるを得ません。