グリーンランドのサメはなぜ200年以上生きられるのか…人間の老化に関する研究が進歩するかもしれない(海外)

AI要約

グリーンランドのサメは最も長寿の魚とされており、400歳まで生きることができるという。

この長寿なサメの研究によって、人間の健康と老化に関する知見が得られる可能性がある。

研究者は老化プロセスの手がかりを求め、サメの代謝を研究している。そして人間の健康改善への応用も期待されている。

ニシオンデンザメ(グリーンランド・シャーク)の生態や代謝に関する研究が進行中であり、その成果によって健康寿命の延伸につながる可能性がある。

グリーンランドのサメはなぜ200年以上生きられるのか…人間の老化に関する研究が進歩するかもしれない(海外)

グリーンランドのサメは最も長寿の魚とされており、400歳まで生きることができるという。

研究者はこのサメを研究し、長寿の秘密を明らかにしようとしている。

グリーンランドのサメの長寿を理解することによって、人間の健康と老化に関わる研究も進歩する可能性がある。

第2代アメリカ大統領の妻であるアビゲイル・アダムス(Abigail Adams)は1744年に生まれた。そのころ北大西洋を泳いでいたグリーンランドのサメが、現在も生息している可能性は十分にある。

この大型で肉食性のサメが何百年も生きられることは間違いない。2016年、研究者たちはこれらが少なくとも272年は生きられることを明らかにしたが、もしかしたら400年も生きるかもしれない。

しかし、なぜこのサメがこれほどまでに長寿なのかについては謎が多い。いくつかの説によると、サメの成長速度の遅さや代謝率の低さを原因としているが、研究は今も進行中だ。

研究者は、このサメがどのように老化するのか、その秘密を解明することで、人間がより健康で長生きできるヒントになると期待している。我々が400歳になることはおそらくないだろうが、人間の平均寿命を十数年だけでも延ばす突破口になるだろう。

この研究に取り組んでいる研究者の1人で、マンチェスター大学博士課程に在籍するユアン・キャンプリソン(Ewan Camplisson)は、老化プロセスの手がかりを求めて、サメの代謝を研究している。

「ニシオンデンザメ(グリーンランド・シャーク)のような長寿の種に関する解剖学とその適応能力をよりよく理解することが、人間の健康改善につながるかもしれない」とキャンプリソンはBusiness Insiderに語っている。

主に北極海や北大西洋に生息するニシオンデンザメはのんびりと泳ぐ。ナショナルジオグラフィックによると、体長は2mから7m、体重は1.5トンにもなるという。

このサメは、サケ、ウナギ、アザラシのほか、ホッキョクグマさえも食べることがあるが、食事と食事の間は、かなり長い時間空く。2022年の研究によると、平均的な224kgのニシオンデンザメであれば、1日に61gから193g程度の魚などを食べれば十分だという。

キャンプリソンは、2024年7月初旬にExperimental Biologyの年次会議で最新研究を発表し、サメの代謝速度は加齢によって遅くならない可能性があることを示した。これでサメが長生きする理由を説明できるかもしれない。

このことは、人間を含めほとんどの動物には当てはまらない。例えば、人間の代謝は年を取ると遅くなる傾向があり、不健康な体重増加の原因となることもある。

キャンプリソンは、保存されていたニシオンデンザメの筋肉組織から採取した5つの代謝酵素の活性を調べた。それについてこう説明している。

「ほとんどの動物では、年を取るにつれてこれらの酵素の活性が変化することが予想される。そのうちのいくつかは機能しなくなったり劣化し始めたりして時間の経過とともに減少する。だが、そのような劣化を補い、十分なエネルギーを生産できるよう活性化する酵素もある」

彼が調べた推定60歳から200歳のニシオンデンザメでは、酵素の活性に大きな違いは見られなかった。これらのサメは200歳で中年に達したばかりなのかもしれない。300歳や400歳になれば違いが出てくる可能性がある。

キャンプリソンは、サメが年を取るにつれて酵素が変化するのか、またどのように変化するのかを調べるために、より多くの酵素を調べるつもりだ。

この種の研究を人間に適用するには、まだやるべきことがたくさん残っている。

「老化は信じられないほど複雑なシステムであり、それがどのように機能するのかについては、まだ決定的な答えは得られていない」とキャンプリソンは言う。