パリ五輪の暑さ対策のカギは「東京方式」、気温は「平年を上回る」とフランス気象局

AI要約

2024年のパリオリンピックは、史上最も暑いオリンピックになると予測され、アスリートたちは金メダルを獲得するために暑熱順化トレーニングを行っている。

気候変動の影響で、世界的な気温が上昇しており、競技全体に影響を及ぼす可能性がある。

暑熱順化トレーニングの恩恵と費用により、オリンピック選手の間の不平等が露呈している。

パリ五輪の暑さ対策のカギは「東京方式」、気温は「平年を上回る」とフランス気象局

 2024年のパリオリンピックは、史上最も暑いオリンピックになると予測され、期待とともに警戒感が高まっている。フランス気象局が7月22日付けで発表した3カ月予報によると、気温は平年を上回る見込みだ。

 その背景には、気候変動と世界的な気温の上昇がある。欧州連合が資金を提供する世界気象機関(WMO)によると、2023年は観測史上最も暑い年だった。ヨーロッパを含む世界各地で激しい熱波が発生し、暑さに関連した死者数も過去20年間で30%増加した。

 気温と湿度が危険なレベルになると予測されるなか、アスリートたちは金メダルを獲得し、世界新記録を出すために、自らの健康を危険にさらすことになるかもしれない。

「すべての競技が影響を受けることになるでしょう。室内競技も例外ではありません」と話すのは、米オレゴン大学環境生理学者のクリストファー・ミンソン氏だ。

 暑さを克服するため、アスリートたちはしばしば、本番の数週間前から暑熱順化トレーニングを始める。これは、室温の高い室内で運動したり、厚着をしたり、またはサウナに入ったりして、暑さに体を慣れさせるトレーニングだ。

 女子サッカーの米国代表チームは、米ミネソタ州にあるコリー・ストリンガー研究所スポーツ安全・教育部長のクリスティアン・イーソン氏らの協力を得て、2021年の東京オリンピックのために暑い室内で調整訓練を行った。

「正しく行えば、暑熱順化トレーニングにデメリットはないと私は思っています」と、ミンソン氏は言う。

 そのミンソン氏も、2008年の北京オリンピックで、暑さが予測されていたレースに備える米マラソン選手デイゼン・リッツェンハイン氏のトレーニングに関わった。リッツェンハイン氏が米国選手のなかでトップの成績を収めたのはこのトレーニングのおかげだったと、ミンソン氏は言う。

 しかし、トレーニングによる恩恵と、それにかかる必要経費は、以前から存在するオリンピック選手の間の不平等という問題を浮き彫りにしている。

 一部の選手は、設備が整った環境と優秀なコーチの下で練習に励むことができる。しかし、飛行機で暑い地域へ移動して訓練したり、最新の機械で健康状態を監視したり、持ち運び可能なエアコンを購入したりする資金力のない国の選手は、思うような結果を出せないかもしれない。

 エアコンに関しては、ウガンダオリンピック委員会のドナルド・ルケール会長がワシントンポスト紙に対して、「私たちにはそこまでする予算がありません」と語っている。数年前のトルコでの競技会で、ウガンダの選手たちはうだるような暑さのなかエアコンのない部屋に泊まらなければならなかった。一方、裕福な国の選手たちは自前のエアコンを持ち込んでいたという。