【社説】暗殺企図招いた「政治の両極化」、暴力は民主主義を破壊する

AI要約

米国のドナルド・トランプ前大統領が共和党の党大会直前の重要な政治集会で銃撃された。国内政治の極度の両極化が内戦の可能性を示唆しており、韓国も政治的対立を緩和する必要がある。

トランプ前大統領が演説中に銃撃を受け、国際社会では米大統領選挙を重要な転換点として捉えられていたが、米国の国内政治に深刻な影響を及ぼす事態が発生した。

韓国の政治も激化し、政党間の対立が激しい状況であり、政治家を狙ったテロも発生している。与野党は勝利を追求するあまり対立を助長し、対話と妥協が求められている。

 米国のドナルド・トランプ前大統領が、共和党の党大会を目前にした重要な政治集会での演説中に銃撃された。発射された銃弾がわずか数センチずれただけでも、全世界を衝撃に陥れる大きな悲劇が発生する可能性があった。11月の大統領選挙を控えた米国でこのようなことが起きたのは、事実上「内戦中」だと言われるほど国内政治が両極化しているからだ。同じ問題で苦悩する韓国も、手遅れになる前に政治的対立を緩和する努力をはじめるべきだ。

 13日(現地時間)午後6時ごろ、ペンシルベニア州バトラーで、トランプ前大統領が演壇で演説中、銃声が鳴り響いた。驚いたトランプ前大統領は演壇の下に身を隠し、警護員たちが素早く駆けつけて彼を取り囲んだ。彼は数時間後、SNSに「銃弾が私の右耳の上部を貫通した」、「米国でこのようなことが発生したということが信じられない」と記している。

 国際社会は今回の米大統領選挙を、「新冷戦」時代の対外政策の方向性を事実上決定付ける重要な「転換点」になるととらえていた。しかし、米国の国内政治にとっての意味は大きく異なっていた。この日の衝撃的な事態から分かるように、人種、性的マイノリティー、移民、妊娠中絶などの最重要問題で互いに異なる「国家アイデンティティー」を主張する集団が、事実上銃声なき内戦を繰り広げているということが確認されたのだ。経済的利害関係をめぐる一般的な対立とは異なり、アイデンティティーをめぐる戦いは解決策を見出すのが難しく、たやすく過激化しうる。米国の政治対立が、簡単には癒やすことのできない「病的な段階」へと足を踏み入れることになったのだ。そのうえ、トランプ前大統領を支持してきた低所得・低学歴の白人労働者は、今回の事態でよりいっそう団結する可能性が高い。

 韓国の政治の両極化も危険水位に達している。2022年のピュー・リサーチ・センターの調査によると、世界の主要19カ国中、別の政党を支持する人々との対立が最も激しい国は、2位が米国、1位が韓国だった。朴槿恵(パク・クネ)元大統領(2006)、共に民主党のイ・ジェミョン代表(2024)ら、主要政治家を狙ったテロも後を絶たない。ますます互いに異なる考えを持つ人々の共存が難しい社会へと変化しつつあるのだ。

 このように事情は深刻だが、与野党はいずれも目の前の勝利のために嫌悪を助長している。近ごろは「フェイクニュース」まで登場し、このような傾向が強まっている。政治は対話を通じて妥協を作り出す過程だ。手遅れになる前に、政治の本質を回復する努力をはじめなければならない。

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