【日本一詳しい北朝鮮分析】ロ朝新条約を精読して分かった「アブナイ関係」

AI要約

プーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪問し、金正恩党総書記と首脳会談を行い、包括的戦略パートナーシップ条約に署名した。

今回の署名は、2000年に締結した『ロ朝友好善隣協力条約』を格上げし、軍事同盟関係を強化するものであった。

ロシアと北朝鮮の双方は最後のギリギリまで条約文の作成に取り組んでおり、新たな関係の定立を目指していた。

【日本一詳しい北朝鮮分析】ロ朝新条約を精読して分かった「アブナイ関係」

ロシアのプーチン大統領は6月19日、24年ぶりに北朝鮮を訪問し、金正恩党総書記と首脳会談を行い、包括的戦略パートナーシップ条約に署名した。

北朝鮮は、今年1月に崔善姫(チェ・ソンヒ)外相がロシアを訪問した後に発表した「公報」で、「朝ロ両国の関係を戦略的な発展の方向で新たな法的基礎の上に引き上げ、全方位的に拡大し、発展させるための実践的問題の討議で一致した共感と満足した合意を遂げた」とした。

筆者は本サイトへの1月の寄稿で、この「法的基礎の上に引き上げ」という意味は「同盟関係までは行かなくても、軍事協力を含めた準同盟関係のような関係改善へ向けて、2000年に締結した『ロ朝友好善隣協力条約』を改正することを目指すのではないか」と予測した。

この予測は半分的中したが、半分外れた。2000年の「ロ朝友好善隣協力条約」を改正し、軍事関係を強化する条約を結ぶという予見は当たったが、今回の「包括的戦略パートナーシップ条約」はロ朝関係を「準同盟」レベルではなく、1961年締結の「ソ朝友好協力相互援助条約」とほぼ同じレベルの「軍事同盟関係」にまで格上げするものであった。ロ朝間の関係修復の水準は筆者の予測を超えたものであった。

今回のプーチン大統領の訪朝の最大の焦点は、ロシアと北朝鮮がどのような外交文書を締結するのかという点にあった。ロシアと北朝鮮はプーチン大統領が、ロシアの最高指導者として初めて訪朝した2000年7月に「ロ朝共同宣言」に署名した。金正日総書記が翌2001年7月から8月にロシアを訪問した際には「モスクワ宣言」に署名した。このため、プーチン大統領の今回の訪朝では「平壌宣言」というタイトルで新たな「宣言」が出るのではないかという見方もあった。「ロ朝共同宣言」と「モスクワ宣言」は、A4用紙で3枚程度で、この種の「宣言」としては長文で、国際情勢の認識や各分野での協力事項などが書き込まれていた。

一方、2000年の「ロ朝友好善隣協力条約」を改正するのであれば、これを代替する「条約」も締結されるのではないかと見られた。

そうした中で、ロシアと北朝鮮両政府は6月17日午後8時過ぎに、それぞれ「プーチン大統領が18,19両日、北朝鮮を訪問する」と発表した。

これに関連し、ロシアのウシャコフ大統領補佐官は同日、プーチン大統領の北朝鮮訪問で、「いろいろな文書に署名することになる」と述べ、「『包括的な戦略パートナーシップ条約』に署名する可能性がある」と述べた。その上で「今回、この条約が締結されれば、1961年の『ロ朝友好協力相互援助条約』や2000年に調印した『ロ朝友好善隣協力条約』に代わるものになる」と説明した。

同補佐官は、「『包括的な戦略パートナーシップ条約』は文書作業中である」とした上で「この文書が締結されれば、現在の世界の地政学的状況とロシアと北朝鮮の二国間関係の水準が反映されるだろう」とした。この時点で、まだ条約文が確定していないが、二国間関係を新たに定立するものになるとした。

その上で「これ(新たな条約)は、当然、国際法のすべての基本原則に従い、いかなる挑発的性格もなく、どの国家も直接対象としていない」とし「北東アジア地域のさらに大きな安全性を保障するのに焦点を合わせるだろう」と述べた。

その上で「双方はまだ作業中で、署名するかどうかの最終決定は数時間内に出るだろう」とした。ロシアと北朝鮮の双方は最後のギリギリまで文案作成をしていたのであった。

非公式対話について「随行員の中に特定の人員が含まれており、最も重要で敏感な事案を論議する予定なので、多くの時間が当てられるだろう」と述べ、「敏感な事案」(軍事協力)が議論される見通しであることを明らかにした。

そして、ロシアのタス通信は3月18日、プーチン大統領が条約締結に関して「適切な指示を下し、外務省に必須的ではない一部内容の修正を許可した」と報じ、プーチン大統領が「包括的戦略パートナーシップ条約」の内容を最終的に了承したことを明らかにした。