【外交ショーに潜むロシアの目論見】ベトナムの“バンブー外交”を利用したプーチンの狙いは?

AI要約

プーチン大統領がベトナムを訪問し、貿易、教育、エネルギー、科学技術分野での関係強化に焦点を当てた。

プーチンの訪越は外交ショーであり、バイデンや習近平との対立を示す一方、歴史的なつながりを強調した。

ベトナムはバンブー外交を展開し、様々な国家との関係を保つ能力を示した。

【外交ショーに潜むロシアの目論見】ベトナムの“バンブー外交”を利用したプーチンの狙いは?

 2024年6月20日付のニューヨーク・タイムズ紙の解説記事は、プーチン大統領のベトナム訪問の本質を3つの点から的確に説明している。

 プーチン大統領は、北朝鮮の後、6月20日にベトナムを訪問した。ベトナムは米国との関係を重視している。露越両国は軍事的に密接な関係にあり、共産主義の歴史も共有しているが、越指導者たちは、プーチンとの会談では、貿易、教育、エネルギー、科学技術分野での関係強化に焦点を当てた。

 以下は、プーチン大統領の訪越から見える3つの重要なポイントである。

(1)プーチンにとっての一種の外交ショーだった。

 過去1年だけでも、ベトナムはバイデン大統領と習近平主席の訪問を受け入れている。プーチンの訪越は、ウクライナ侵攻をめぐって西側諸国がプーチンを孤立させようとする中、プーチンがまだ世界の指導者たちに受け入れられていることを示すものである。

 越露両国はイデオロギーで結ばれた長い歴史を共有している。1950年、ソ連はベトナム民主共和国(北ベトナム)を外交的に承認した最初の国の一つである。グエン・フー・チョン書記長は、プーチン大統領に対して「ロシアに住み、学んだ者として、暖かく、美しく、偉大な国ロシアを今でも懐かしく思い出す」と語った由である。

 プーチンは木曜日、「ソ連は、フランスと米国の侵略に対するベトナム国民の英雄的闘いを支援し、ベトナム社会主義共和国の平和的建設に貢献した」と語った。

 ベトナムは、ロシアのウクライナ侵略への支持表明はしていないが、同時にロシアを疎外しないようにも注意している。先週末、ベトナムはスイスで開催されたウクライナ和平サミットを欠席した。また、ロシアのウクライナ攻撃を非難する4つの国連決議に棄権した。国連人権理事会からロシアを排除する動議には反対した。

(2)プーチン大統領のハノイでの発言は抑制的だった。

 ハノイでプーチン大統領は、米国に対する激しい言葉を抑え、貿易と歴史的関係についての当たり障りのない発言に終始した。昨年、米国との関係を強化したベトナムは、プーチン氏の訪問がどのように見えるかについて留意していた。ロシアは以前からベトナムに武器を供給しているが、武器調達や防衛について公の場で語られることはほとんどなかった。

(3)ベトナムにとっては、「バンブー外交」の見せ所だった。

 ベトナムは7カ国(露中米印韓日豪)と最高レベルの二国間関係を結んでいる。

 露越両国は、南シナ海のベトナムの石油・ガス開発から大きな利益を得ている。また、プーチン大統領は、ベトナムに石油・ガス製品を長期的に供給することを約束した。

 国際危機グループ(ICG)のフオン・レ・トゥー副所長(アジア担当)は、「プーチンの訪問は、大国間の競争や対立にもかかわらず、ベトナムがあらゆる国家との関係を維持する能力を示したものだ」と述べた。チョン書記長は、この外交を「バンブー外交」と呼んでいる。竹の枝のような柔軟性を発揮して、大国間の関係をバランスよく保つことができる。

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