甲子園優勝投手に「ビビってんのか?」慶応の“美白王子”丸田湊斗にも厳しい言葉を…高校日本代表を率いた明徳義塾・馬淵史郎監督の素顔
高校日本代表が初優勝を果たした明徳義塾の馬淵史郎監督について、選手たちのエピソードを通じて紹介。
高橋煌稀が台湾での試合で初回に3点を失い、馬淵監督が直接指示を出す場面が描かれる。
馬淵監督は率直な性格で、選手に対して厳しい言葉をかけることもあるが、結果的に選手たちの成長に繋がっている。
世界の壁に跳ね返され続けていた高校日本代表。その指揮を任され、悲願の初優勝へと導いたのは、変わりゆく高校野球界の“対極”に位置する馬渕史郎監督(明徳義塾)だった。選手たちは何を思い、いかにして戦っていたのか。
発売中のNumber1102号掲載の[日本代表メンバーが語る]明徳義塾・馬淵史郎「時代も価値観も超えて」より内容を一部抜粋してお届けします。
やや芝居がかってはいたが、そのことが逆に冗談ではないのだろうなと思わせた。
「……怖かったです」
そうこぼしたのは早稲田大1年生の高橋煌稀だ。一昨年、仙台育英の二枚看板の一人として、夏の甲子園で胴上げ投手になった長身右腕でもある。インタビュー中、感情をほとんど表に出さなかったが、そんな高橋がうっすらと笑みを浮かべていた。
高橋が振り返ったのは昨年夏、台湾で開催されたU-18W杯でのことだ。
日本代表はスーパーラウンドの3戦目で優勝候補の地元・台湾(チャイニーズ・タイペイ)とぶつかった。台湾応援団のマイクでがなる独特の大声援が球場を覆い、日本人選手たちの神経を逆なでする。そんな中、先発した高橋は2者連続で四球を与えた上に、3盗塁をからめられるなどして、初回にいきなり3点を失った。
「調子がよくなくて、ストライクを投げたくても投げられなかったんです」
W杯は日本の高校野球とは異なり、監督が自らマウンドへ行くことが許されている。高橋の乱調を見かね、監督の馬淵史郎がベンチを飛び出した。馬淵は小柄だが、闘争心の権化のような男だ。高橋はマウンドで馬淵にこう言われたのだという。
「ストライク入れろ、みたいな」
この回想はかなりマイルドに加工されている。大会直後に横浜高校の緒方漣を取材した際、そのとき馬淵は「ビビってんのか?」と高橋に軽く詰め寄ったと話していた。高橋に確認すると、こう首肯した。
「そういう感じでしたね」
馬淵は、よくも悪くも直情型の監督である。緒方は、こう苦笑いしていたものだ。
「練習試合でバントを失敗したら『緒方、そんなんやってたら使えんぞ』って。会ってまだ3日目なのに、そんなにズバッと言われるんだ、って思いましたね」