「私って、こういう運命なのか」 襲われた2度の試練、“パリ五輪絶望”の先に進んで2人で見た風景――バドミントン・福島由紀

AI要約

パリ五輪で金メダルを獲得することはできず、最後の五輪レースの試合後に自身の感情を振り返る福島由紀。

東京五輪直前にペアを組んだ相手が大怪我を負い、廣田彩花とのメダル獲得の可能性を失うことになった苦い思いを語る。

廣田の復帰後も試練が続き、左膝の怪我による棄権など困難に立ち向かう中、前を向いて練習を続ける原動力を語る。

「私って、こういう運命なのか」 襲われた2度の試練、“パリ五輪絶望”の先に進んで2人で見た風景――バドミントン・福島由紀

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

 今回は連載「なぜ、人はスポーツをするのか」。スポーツはなぜ世の中に必要なのか。五輪という極限の頂に辿り着いたアスリートだからこそ、導き出される“アンサー”を問う。第3回はバドミントン女子ダブルスでパリ五輪を目指した福島由紀。3年前、金メダル候補として目指した東京五輪は直前にペアを組む廣田彩花が大怪我を負い、力を発揮しきれないまま8強で敗れた。決意を胸に臨んだパリ五輪レースはまたも試練に襲われ、道半ばで涙を呑む。目指した舞台にさえ立てず、絶望的な感情に襲われても、1人のアスリートとして前を向く。何度も失意を味わいながら、コートに立ち続ける原動力を明かした。(取材・文=藤井 雅彦)

 ◇ ◇ ◇

 パリ五輪で金メダルを獲得するという目標を叶えることができませんでした。最後の五輪レースの試合が終わった時は、パリの舞台に立てない悔しさよりも、やりきったという気持ちのほうが大きかったです。

(2021年の)東京五輪の話になりますが、開幕直前にペアを組む廣田が右膝前十字靭帯断裂という大怪我を負いました。世界ランク1位で迎える日本での五輪。私たちはメダルを狙える位置にいたと思います。その舞台にも立てなくなる可能性がありましたが、廣田は大会前に手術はせずにプロテクターを装着して出場することを決意。これまでのようなプレーができないからこそ、これまで以上に声を掛け合いました。私は廣田の分も全て拾う気持ちでしたし、廣田も必死にプレーしてくれました。

 結果は準々決勝で敗退。多くの方から諦めない姿勢に感動と勇気をもらったなどの温かい言葉をいただきましたし、私も廣田の懸命なプレーに勇気づけられました。

 その後、廣田は手術後の懸命なリハビリを乗り越えました。練習でコンビネーションをさらに磨き、パリ五輪のレースに挑みました。取りこぼす試合ももちろんありましたが、何とか出場圏内にいることができました。

 でも、順調にはいかないものですね。

 昨年12月にインドで行われたシドモディ・インターナショナル(BWFワールドツアースーパー300)の準決勝で、廣田が左膝を負傷して棄権しました。左膝前十字靭帯断裂という診断でした。

 今となっては日が経っているので、話せるようになってきました。先ほどはやりきった気持ちのほうが大きかったと話しましたが、こうやって当時のことを振り返ってみるとやりきれない気持ちというか、辛かったですね。