「何百万円のボーナスを捨てて、教師になるなんてお前バカか?」高校野球が好きすぎる東大エリート…“甲子園予選”で実現した「東大卒監督vs東大卒監督」

AI要約

開成高校と駿台学園高校の野球部対戦にフォーカスした記事。

両校の監督は東大野球部のOBであり、それぞれの指導方法やチームの特徴が紹介されている。

両校の戦略や選手の成長について、対戦前のコメントや背景も含まれている。

「何百万円のボーナスを捨てて、教師になるなんてお前バカか?」高校野球が好きすぎる東大エリート…“甲子園予選”で実現した「東大卒監督vs東大卒監督」

第106回全国高校野球選手権大会の予選が続々とスタートし、東東京大会では127チームがしのぎを削る。それぞれのチームにドラマがあるが、今回は7月14日に行われた開成高校と駿台学園高校の対戦にフォーカスしたい。

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 開成高校といえば、東大合格者数において全国トップを誇る、私立のスーパー進学校である。一方の駿台学園も中高一貫の私立で、男子バレーボール部は全国区の強豪だ。一見、なんの関係性もない両校だが、実は互いの野球部監督は東大野球部のOBなのである。

 頭脳と体力を兼ね備えた東大野球部員たちは、名だたる大企業から引く手数多。彼らの華々しい就職先については、筆者はこれまでNumberWebで紹介してきたが、そんなOBたちの中にあって、両校の監督はきわめてレアケースだ。

 駿台学園の監督の三角裕(1983年卒・県立浦和)は、大学時代は野手として活動し、ただ野球指導をしたいがために高校の教師となる。「大企業に入れば何百万円のボーナスをもらえるのに、それを捨てて教師になるなんてバカか?」と周囲に呆れられた三角のキャリアは既出記事に詳しい。彼の監督としての手腕は確かで、過去には伊奈学園(埼玉)を率いて、春の選抜甲子園に出場した経験を持つ。

 一方、開成の監督は青木秀憲(1995年卒・太田)。大学時代は外野手やマネージャーを務め、東大大学院を経て開成の教員となった。1999年から25年間、開成野球部を率いている。他の部活とのかねあいで自校のグラウンドをほとんど使えないという練習環境で、いかに戦うかを考える青木の戦略は、ズバリ打ち勝つ野球である。打撃に特化した青木の指導方法は、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』(高橋秀実著・新潮社)として書籍化されたほどだ。

 このような東大野球部きっての野球狂の二人が、奇しくも今年の夏は初戦で激突したのである。

 駿台の三角は対戦を控え、こう語っていた。

「駿台の今までの課題は、春から夏にかけて個人においてもチームにおいても成長がなかなか見られないということでした。今年のチームはわずかずつではありますが、個人、チームに成長が見えているのが例年との違いです。たまたま今年は初戦の相手が開成ですが、選手には相手ではなく、自分たちがどれだけ日々成長して大会を迎えられるかに集中するように話をしていますし、私自身も相手のことは考えていません」

 実は駿台学園中学部の軟式野球部は全国屈指の強豪校だ。主力メンバーは高校進学を機に二松学舎などの強豪校に進むが、控えメンバーが内部進学してくるケースもある。彼らは三角の指導のもと、高校では主力メンバーとして活躍している。

「キャプテンの片野壮一郎、キャッチャーの渡部素直、4番の町田響はそれぞれ駿台中では控えでしたが、見事に中心選手に成長しました。また、駿台中出身ではありませんが、エースの川口琉玖は5月に父親を亡くしましたが、それを乗り越え、チーム内で一番成長しています。彼は今年のチームを象徴する選手です」

 一方の青木は「勝敗はバッティングの奮起次第」と話していた。

「うちはシード校と渡り合えるレベルのチーム作りを目指しています。駿台学園さんはシード校レベルだと思いますので、初戦からその真価が問われる。打線が奮起してくれれば勝ち目はありますが、うちは5点以上、取れなければ勝負にはならないでしょう」

 開成は昨年まで2年連続で4回戦進出を果たしているものの、「そこまで手応えはなく、打撃の調子が夏に上がったというのが要因」(青木)というほど開成の夏はバッティングにかかっている。

 ちなみに、開成と駿台は度々練習試合を行なっている。両校に埼玉の大宮高校を加えての座組みだが、大宮の監督も東大野球部OBだ。

「東大野球部のOBは卒業後、野球の第一線を退く人が多い。OBで野球に携わる人が増えれば、東大野球部のレベルの底上げにつながると感じています。東大以外の六大学各校はOB監督同士の試合が全国でありますからね。今回の対戦を通して、もっとOBが野球に携わってほしいというメッセージを伝えたいんです」(青木)