苦節15年、福住仁嶺の手でSF初ポール達成のKCMG。悲願の初優勝に向け「不安材料がないと言ったら嘘になる」一方で「楽しんで」

AI要約

福住仁嶺が15年目にしてKids com Team KCMGの初ポールポジションを獲得

福住は天才的なセンスでマシンセットアップを見極める

KCMGチームオーナーやスタッフは初優勝に向けてプレッシャーを楽しむ姿勢を示す

苦節15年、福住仁嶺の手でSF初ポール達成のKCMG。悲願の初優勝に向け「不安材料がないと言ったら嘘になる」一方で「楽しんで」

 第1回瑶子女王杯スーパーフォーミュラ第4戦富士の予選でポールポジションを獲得したのは、Kids com Team KCMGの福住仁嶺。チームにとっては、参戦から15年目で手にした初ポールだった。

 香港を拠点とするKCMGは、土居隆二代表率いるDTMがオペレーションする形でスーパーフォーミュラ(参戦当初はフォーミュラ・ニッポン)への参戦を開始。2017年には元F1ドライバーの小林可夢偉が加入し、2020年からは2台体制に拡充するなど力をつけてはきたが、ポール、優勝にはあと一歩のところで手が届かずにいた。

 今季からは小林のチームメイトとして、ホンダ陣営から福住仁嶺が加入。2021年にはシリーズ2位を獲得した実績を持つ福住が、4戦目にしてポールを獲得した形だ。

 土居代表はそんな福住を“天才”と表現する。そして「本人には『それだと僕は努力してないみたいじゃないですか』と言われますけどね」と笑ってみせた。曰く、福住は限られた時間でマシンセットアップを煮詰めていく必要がある中で、現状を整理しながらの取捨選択が絶妙に上手いのだという。

「単純な良い悪いという話だけでなく、我々がシンプルに考えると『さっきの良かったんじゃないか』と思うようなものでも、状況を考えて『そこは今は取るべきではない』と元に戻したりと、取捨選択のセンスがいいですね」

 また今回の富士戦からは、開幕当初は小林担当だった田坂泰啓エンジニアが福住の担当トラックエンジニアとなった。それまで福住担当だった笠井昭則エンジニアは、テクニカルディレクターとしてチームを統括する立場となった。

 どちらかと言えば天才肌の感覚派と言える田坂泰啓エンジニアは、当初から小林とのケミストリー構築に時間がかかりそうな雰囲気があったが、福住担当となって1戦目で結果を残した形。小林号のトラックエンジニアはシーズン途中でイタリア人のコシモ・プルシアーノに変更となった(チームのコーディネーターである関口雄飛の推薦があったという)が、田坂エンジニアは小林担当から外れた後も、福住陣営の働きぶりを後方から観察して、入念に“作戦”を練っていたようだ。

 今回は奇しくも、チームオーナーのポール・イップが富士を訪れている。「オーナーのポールは15年間、僕たちを信じて、口を出さずにお金を出し続けてくれて、我々はKCMGの名前を背負って日本でレースをやらせてもらうことができました」と土居代表はしみじみと語る。また悲願のポール獲得については「ようやく……色んな方に対して『お待たせしました』という感じです」として、同時にチーム全員への感謝の気持ちを述べた。

 ポールポジションを手にしたKCMGの次なる目標は、当然初優勝。しかし土居代表は「不安材料がないかと言ったら嘘になります」と言う。

「我々はタイヤ交換などをたくさんミスしてきて、可夢偉の優勝のチャンスを奪ってしまったということは事実としてあります。それは1回や2回ではありません」

 そう語る土居代表だが、チームスタッフにはこの状況に萎縮するのではなく、これまでにないプレッシャーを楽しんでほしいと激励する。

「今回福住選手にスタート決めてレースをリードしてもらうと、(ピットに)先頭で入ってきてくれるわけです。プレッシャーは倍増しますよね。でも、これを楽しめるかどうかです」

「そんなシチュエーション、お願いしても買えるものではありません。やはり人間ですから『そこでうまくいかなかったらどうしよう』となりがちですが、そう思うのではなく、ワクワクして、楽しんで欲しいです」