観測精度5倍に、ブラックホール撮像に世界で初めて成功した研究グループが挑む

AI要約

国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」のメンバーが新しいブラックホールの観測計画を発表。

新計画は米国のNASAとの協力で進められ、観測精度を向上させるために衛星を活用。

日本も計画に参加し、衛星開発の技術を活かす意向。

ブラックホールの撮像に世界で初めて成功した国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」のメンバーを中心としたグループは、地上と衛星に搭載した電波望遠鏡をつないで高精度にブラックホールを観測する計画を本格化する。2019年に発表したブラックホールの観測時より精度が3―5倍に向上し、鮮明な画像を得られる。衛星の打ち上げ目標は31年。ブラックホールの構造や周囲環境の知見獲得を目指す。

新しいブラックホールの観測計画は「ブラックホール・エクスプローラー(BHEX)」。米航空宇宙局(NASA)の衛星プロジェクトとして進めたい考えで、25年にもNASAに提案する予定。採択されれば衛星の設計や開発が進み、早ければ31年にも米国のロケットで打ち上げる。

EHTは二つのブラックホールの撮影に成功しており、その成果がノーベル物理学賞の候補に挙がっている。これまでに、世界各国の電波望遠鏡をつないで地球サイズの仮想的な望遠鏡を作り上げる「超長基線電波干渉法(VLBI)」で観測し、人間の目に例えて「視力300万」を実現した。ただ、より鮮明なブラックホールの画像を得るには望遠鏡を地球より大きくする必要がある。

そこで電波望遠鏡を搭載した衛星を打ち上げて地球からの高度約3万キロメートルの軌道に投入し、地上の望遠鏡と連携することで従来の3―5倍に観測精度を向上する。これにより、ブラックホールに最も近いところで重力で光の軌道がねじ曲げられた領域に取り巻く“光のリング”を鮮明に観測できる可能性が高い。観測からリングの大きさや歪みが分かればブラックホールの質量やスピンを決められる。またブラックホールの中心部から高速で噴出するジェットなどの研究も進むと見られる。

日本も国立天文台を中心に同計画への参加を目指している。人工衛星の開発にも貢献したい考えで、宇宙用冷凍機や超電導素子などの技術開発を日本が担当する可能性がある。EHTの日本チームの責任者である国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は「日本には衛星開発の技術・強みがある。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や企業などとも協力して進めていきたい」と強調した。