「墓穴を掘った」新種の恐竜を発見、9900万年前に自分が掘った穴で生き埋めに

AI要約

新種の恐竜フォナ・ヘルゾガエ(Fona herzogae)の化石が発見され、穴を掘る特徴を持つことが注目されている。

フォナは、穴掘り恐竜として頻繁に化石が残ることができたため、古生物学者にとっては驚きだった。

フォナの腰の頑丈さや肩の構造などから、恐竜の穴掘り行動に関する興味深い適応が分析されている。

「墓穴を掘った」新種の恐竜を発見、9900万年前に自分が掘った穴で生き埋めに

 米国ユタ州東部の砂漠にある9900万年前の岩石からは恐竜の化石が見つかることがあるが、そのほとんどが太陽の光にさらされて風化して砕け、小さな破片になっている。けれども、今回発見された新種の恐竜フォナ・ヘルゾガエ(Fona herzogae)の化石は違った。白亜紀の小さな植物食恐竜は地面に掘った穴で半ば暮らしていたため、ときどき運悪く生き埋めになるものがいて、同時代のほかの恐竜よりも多くの化石が残っていたのだ。論文は2024年7月9日付けで学術誌「The Anatomical Record」に発表された。

 フォナ属は、テスケロサウルス亜科という小型から中型植物食恐竜のグループに分類される。この恐竜たちにはトゲや角やトサカなどの奇抜な装飾はなく、哺乳類で言えばヒツジのような存在だった。

 2023年11月に学術誌「Scientific Reports」に発表された証拠から、テスケロサウルスは恐竜としては珍しく穴を掘る特徴を発達させていたことが分かっている。この習性によって、テスケロサウルスは同時代のほかの小型恐竜よりも頻繁に化石が残るようになった可能性がある。

「私たちがユタ州東部の白亜紀前期の岩石から見つけた恐竜の化石の中で特に多かったのが、フォナの骨格化石でした」と、論文の筆頭著者である米ノースカロライナ自然科学博物館の古生物学者ハビブ・アブラハミ氏は言う。研究チームは、フォナのほぼ完全な骨格のほかに、同じ岩層の異なる場所で、複数のフォナの骨格とばらばらの骨も発見した。

 古生物学者にとって、小型恐竜の化石がこれほど豊富に見つかるのは予想外だった。

 おとなのフォナの頭の先から尾の先までの長さは約2メートルあったが、尾が長いため、胴体の大きさは大型犬ほどだった。一般に、小型恐竜は大型恐竜の餌食になるだけでなく、骨が繊細で、死骸は化石化する前に分解されてしまうことが多かったと考えられる。

 その上、この地域には当時は多くの河川があったため、恐竜の死骸は腐り、ばらばらになり、散逸してしまったとアブラハミ氏は言う。

 けれども穴を掘る習性を持つフォナは、小型恐竜の化石にありがちな運命から逃れることができた。発見されたフォナの骨格は、2007年に学術誌「英国王立協会紀要B(Proceedings of the Royal Society B)」で報告されたオリクトドロメウス(Oryctodromeus)という別の穴掘り恐竜と同じように、地下の空洞に埋まって保存されていたようだ。

 オリクトドロメウスが発見されるまで、古生物学者は恐竜が穴を掘ることを知らなかった。そして今、穴を掘る能力は、クチバシを持つ小型の植物食恐竜の間で複数回進化してきたのではないかと考えられている。

 今回の化石が発掘された現場の1つでは、少なくとも2頭のフォナが互いに絡まり合うような体勢で発見された。「これはまさに、複数の個体が1つの穴を共有しているときに予想される体勢です」と、米エモリー大学の古生物学者であるアンソニー・マーティン氏は言う。なお、氏は今回の研究には参加していない。

 他の穴掘り恐竜の化石と同様、フォナの骨にも土を掘る習性に関連した適応が見られた。

 フォナの腰は頑丈で、いくつかの骨は癒合していた。また、肩の骨は、腕の太い筋肉が付着できるように広がっていた。

 おかげで、恐竜の腕の力は強くなり、地面を掻きやすくなる。頑丈な腰は、恐竜がこの動作のストレスに耐えるのを助けただろう。アブラハミ氏は、恐竜はトビウサギなどの哺乳類と同じようにして土を掘ったのではないかと推測している。すなわち、前脚を使って土を崩してから、後脚で蹴り出すのだ。