ミノア文明滅亡の謎…エーゲ海に浮かぶ火山島「サントリーニ」の誕生と成長、そして、3600年前に起こった「史上最大の大噴火」

AI要約

サントリーニ火山は、ギリシャのエーゲ海に浮かぶ火山島で、紀元前古代ギリシアから現代に至るまで噴火の歴史が記録されている。島の美しい景観や豊かな文化と並んで、活火山としても知られている。

サントリーニ火山が属するエーゲ海キクラデス諸島は、沈み込み帯に位置し、ティラ島とティラシア島からなるカルデラ地形が特徴的である。過去の巨大噴火により、現在の環状の火山島群が形成された。

現在は約1万5000人の住民が暮らすサントリーニ火山では、地中海の楽園のような風景や食の魅力と並んで、火山と人間の共生の歴史が感じられる。過去に大噴火があったとされ、それが歴史的な事件に影響を及ぼした可能性もある。

ミノア文明滅亡の謎…エーゲ海に浮かぶ火山島「サントリーニ」の誕生と成長、そして、3600年前に起こった「史上最大の大噴火」

新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。

今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。

ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、ギリシャ・エーゲ海に浮かぶ火山島「サントリーニ火山」を取り上げます。なんと、3000年以上前に栄えたミノア文明は、この火山の大噴火で衰退に及んだ、という説もあります。歴史に刻まれた大噴火の痕跡をたどります。

※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。

火山噴火はそのダイナミックで圧倒的な姿により古くから人々を魅了し畏れられ、時には歴史的な書物の中にその様子が記録されてきた。日本国内では古文書で遡ることができる噴火の記録はせいぜい6~7世紀ほどまでで、それより古い記録は地層に残された痕跡から探るほかに術はない。

今回、取り上げるサントリーニ火山・カメニ島は、紀元前古代ギリシアの時代から現代に至る歴史の中で、噴火のたびにその様子が記録されてきた世界的にもまれな火山だ。サントリーニ火山、そしてカメニ島とはどのような場所で、地中海の歴史とともにどのように変化してきたのだろうか?

歴史記録や著者の訪問記録をもとに探っていこう。

切り立った崖の上に所狭しと並ぶ丸屋根の白い家々、その背後に静かな海が広がる様子はサントリーニのガイドブックの表紙としてお馴染みの光景だ(記事冒頭の写真)。ギリシアの歴史や文化、美しい自然を象徴するかのようなこの島を肌で感じようと、世界各地から多くの観光客が訪れる。

地中海のやや乾燥した気候は葡萄やオリーブの生育に適しており、サントリーニは食の面でも魅力的な場所となっている。海辺の美しい風景に囲まれ、ワインを片手にゆったりと過ぎゆく時間を堪能できる、まさに地中海の楽園のような場所だ。

一方で世界有数の活火山としても広く知られている。独特の景観と文化が長い年月にわたる火山と人間の共生の結果生み出されたものであることを、サントリーニを訪れると実感できる。

活火山サントリーニが属するエーゲ海キクラデス諸島南縁は日本列島と同様に沈み込み帯にできた火山列で、火山島や海底火山が多く存在する地域だ。サントリーニを特徴づける三日月型のティラ島と西側のティラシア島をつないでできる環状の構造はカルデラ地形で、この場所が巨大な火山であることを象徴する)。

現在はティラ島をはじめ大小の島々からなるが、かつてはここに大きな火山島が存在したと考えられている。過去数十万年の間に巨大噴火を繰り返した結果、特徴的な地形の火山島群がつくられ、現在はそこに約1万5000人の住民が暮らしている。