海底の噴火で生まれたものの、やがて消滅した「聖なる島」…なんと、200年の時を経て、同じ場所に現れた黒い島が語る「火山島の盛衰」

AI要約

新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。

ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。

ティラ島のカルデラ壁には過去に何度も起きた巨大噴火の痕跡が露出しているが、一番上の厚い地層がミノア噴火の堆積物だ。

海底の噴火で生まれたものの、やがて消滅した「聖なる島」…なんと、200年の時を経て、同じ場所に現れた黒い島が語る「火山島の盛衰」

新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。

今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。

ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、史上最大規模と考えられているミノア噴火後のサントリーニ火山を取り上げます。

※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。

前回述べたように、サントリーニの火山としての魅力、そして歴史的背景に興味を持った著者は2010年9月、英国の大学生らとともにサントリーニを訪れる機会を得た。

ミノア噴火の痕跡はもちろん見所だが、そのほかにもさまざまな時代の噴火堆積物が地層断面としてカルデラ壁に露出し、地質学の知識、経験、感性を養成するのに格好の材料をこの島は提供する。

欧州に活火山は多くないが、地質学の教科書のようなこの島にまで足を延ばし、思考や作業の経験を積むことは学生にとって間違いなく刺激的で得るものも大きいはずだ。著者は彼らのフィールドワークの一端に触れつつ、一訪問者として冒頭で述べたようなサントリーニ気分ももちろん満喫した。

ティラ島のカルデラ壁には過去に何度も起きた巨大噴火の痕跡が露出しているが、一番上の厚い地層がミノア噴火の堆積物だ。ミノア噴火では大規模な火砕流が発生し、堆積物を広範に残したが、近傍ではその厚さは数十mをゆうに超え、軽石と火山灰からなる真っ白い巨大な壁として立ちはだかる。

ティラ島が全体的に白みを帯びているのは、島の主要な部分がこのような火砕流堆積物でできているためだ。この堆積物を見ると、ミノア噴火がサントリーニにあったもの全てを地層の下に封じ込めてしまったことがよくわかる。