富士宮やきそばに〝進化形〟 その名も「パエリやきそば」 商店主ら組合が新味開発

AI要約

富士宮市のB級グルメ界における名物「富士宮やきそば」が新たな進化を遂げ、「パエリやきそば」として誕生した。

同市の食のひらめき会が開発したこの一皿は、富士宮やきそばの麺を使用し、魚介とトマトでとったスープ、サフラン、レモンなどで味付けされている。

地元店舗での提供が始まる「パエリやきそば」は、観光客にも市民にも好評で、富士宮の食文化の新たなる一面を魅力的に示している。

富士宮やきそばに〝進化形〟 その名も「パエリやきそば」 商店主ら組合が新味開発

 長らくB級グルメ界の中心にいる「富士宮やきそば」に〝進化形〟誕生の兆しが出ている。その名も「パエリやきそば」。スペイン料理の代表格パエリアのように魚介のうまみを押し出す一皿を、富士宮市の商店街の店主らでつくる企業組合「食のひらめき会」が開発した。増田恭子代表(75)は「慣れ親しんだソース味に変化をつける新提案」と、富士宮の新名物へと名乗りを上げる。

 パエリやきそばは、富士宮やきそばの定義でもある市内4社製造の硬い蒸し麺を使用する。麺を炒める過程で、イカやエビなどの魚介とトマトでとったスープ、サフランを加え蒸し焼きにし、レモンをさっと搾って仕上げる。魚介の深い味わいが強く主張し、ほどよい酸味とスパイスの香りが食欲をかき立てる。

 開発のきっかけは、同市が東京五輪で空手スペイン代表チームのホストタウンを務めたことだった。増田さんは同国カタルーニャ地方のパスタ・パエリア「フィデウア」から着想を得たという。富士宮と同国の友好の証しとなる商品開発に向け、ひらめき会は昨秋から焼きそばとの親和性について研究を重ねてきた。

 9月中に飲食店での提供が始まる。同市大宮町の「ジャズと喫茶フィガロ」がレギュラーメニューに加える。同店の峰亜由美さん(51)は「独特の硬い蒸し麺はふやけにくく、スープを吸わせるパエリアに向いている」と手応えを語り、「吸わせ具合や具材選びで各店の個性が出るだろう」と、波及の可能性をみる。

 富士宮やきそばは観光客に圧倒的な人気を誇り、市内各店の昼時は行列ができる。一方、市民は「自分の好みで焼いた方がおいしい」と言うほどにやきそば文化が成熟している。パエリやきそばは市販のパエリアのもととシーフードミックスでも代用できる。峰さんは「米のパエリアより手軽。家庭の昼食にも適している」という。

 富士宮の食文化をけん引してきた焼きそばは、盤石が故に新名物誕生の壁となってきた。増田さんは「王道は王道で末永く。一方で工夫を楽しむ時代が来ても良いのでは」と話す。