積ん読(8月21日)

AI要約

作家の江国香織さんは本を身近に感じて育った。エッセイストの父滋さんの書斎に文字を覚えた頃から出入りし、何げなく背表紙を眺めていたという。

買った本をいつかは読もうと思いつつ、読まずに机に積み重ねたまま。いわゆる「積ん読」は、いろんな知の力をためているのだろうか。

ある大手書店の調査で、積ん読があると答えた人は約8割に上る。日の入りがだんだん早くなってきた。そろそろ未読の山に分け入ってみるか。

 作家の江国香織さんは本を身近に感じて育った。エッセイストの父滋さんの書斎に文字を覚えた頃から出入りし、何げなく背表紙を眺めていたという▼〈本が発散するオーラがあって、(中略)それはたとえ読まなくてもかなり強いものです〉。部屋にあるだけで不思議な力を感じたと、対談で明かしている。買った本をいつかは読もうと思いつつ、読まずに机に積み重ねたまま。いわゆる「積[つ]ん読[どく]」は、いろんな知の力をためているのだろうか▼積ん読の歴史は明治時代にさかのぼる。雑誌や書籍に登場し、読書家を中心に浸透した。読めていない後ろめたさがつきまとう。近年は世界共通語になりつつある。「対応する英語表現がない」と、英BBC放送などで取り上げられ各国に広まった。今では「tsundoku」を収録する辞書も。知らず知らずに本が増える悩ましさは、日本人だけではないようだ▼ある大手書店の調査で、積ん読があると答えた人は約8割に上る。他に優先して読む本が増えた、読む時間がない…。理由はさまざまだ。日の入りがだんだん早くなってきた。そろそろ未読の山に分け入ってみるか。本肥ゆる読書の秋の気配を探しつつ。<2024・8・21>