性暴力の“二次被害”防いで 事前学習、柔軟な対応訴え カウンセラー松林さん

AI要約

性暴力の被害を受ける子どもが安全な場所で後を絶たず、周囲に相談しにくい状況にあることが指摘されている。

性暴力に関する事前の学習や認識の重要性が強調されており、被害者への応対方法や加害者へのカウンセリングも取り上げられている。

子どもに問題行動が見られた場合も、その背景や原因を冷静に考えることが重要であり、社会全体で性暴力問題に取り組む必要性が訴えられている。

性暴力の“二次被害”防いで 事前学習、柔軟な対応訴え カウンセラー松林さん

 家庭や学校など本来は安全であるべき場所で、子どもが性暴力を受ける事例が後を絶たない。被害を誰にも言えない子どもや、相談しても大人の理解を得られずにさらに傷つく“二次被害”に遭う子もいる。藤枝市で性暴力に関する相談に乗るカウンセラー松林三樹夫さん(72)は「子どもに関わる大人は二次被害を生まないよう、性暴力問題について学んでおく必要がある」と訴える。

 性暴力は、同意のない性的な行為や、許可なく体を触ることなどを指す。重大な人権侵害に当たり「魂の殺人」と言われるほど、心に与えるダメージが大きい。松林さんは4日に静岡市清水区で開かれた性教育をテーマにした全国セミナーに登壇。子どもの頃に家族から性暴力を受け、被害を周囲に訴えたが取り合ってもらえなかったり、逆に責められたりし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に長く苦しむ相談者の事例などを紹介した。

 一方、「被害の相談を受けた人も性暴力について事前の学習がないと、戸惑ったり、相手の気持ちを受け止め切れなかったりする」とし、性暴力への認識を社会で広く共有する重要性を指摘した。その上で、被害に遭った人から話を聞く際に心がけることとして、否定することなく聞き、気持ちを受け止める▽「つらかったね」「あなたは悪くない」と伝える▽大人の見方や価値判断で決めつけない▽どうしたらいいか一緒に考える-を挙げた。

 性暴力被害が疑われる子どもは「なかなかストレートには話さない」といい、「問題行動や気になる行動は、誰かに気付いてほしいというサイン。そういう視点で子どもを見てほしい」と呼びかけた。子どもに問題行動があると「大人はあきれたり驚いたりして、嘆く、怒る、指導する-といったことをしがち。行動の背景や原因について思いを巡らせると、冷静でより深い対応がとれるようになる」と強調した。

 松林さんは性暴力の加害者に対するカウンセリングもしている。これまで相談に当たった事例では、性暴力の加害者が、家庭内で暴力や虐待を受けているケースが少なくなかった。「性暴力の加害は許されない」とした上で、「加害者に対してもまず、心の奥にため込んだものを吐き出してもらっている。行動の背景や原因を探り克服していくことが、再発防止につながる」と語った。