離島に暮らす水俣病被害者の状況「感じたはず」…熊本県水俣市と海隔てた獅子島、環境行政トップが47年ぶり現地入り 離島手当拡充には従来の回答繰り返す

AI要約

環境相と水俣病被害者団体との再懇談が行われ、被害者の要望や要求が述べられた。獅子島では離島手当の増額や慰霊碑設置が求められた。

環境相は要望について検討する姿勢を示し、離島手当の増額などについては具体的な対応は不明である。

患者連合との協議や検討が進められる中、問題解決に向けた取り組みが続いている。

離島に暮らす水俣病被害者の状況「感じたはず」…熊本県水俣市と海隔てた獅子島、環境行政トップが47年ぶり現地入り 離島手当拡充には従来の回答繰り返す

 水俣病被害者団体と伊藤信太郎環境相との5月の懇談で環境省職員が被害者の発言中にマイクを切った問題を受け、設けられた再懇談の最終日が11日、長島町獅子島などであった。「水俣病被害者獅子島の会」が離島手当の増額や慰霊碑設置を要求したのに対し、伊藤氏は「検討する」と従来の回答を繰り返した。環境行政のトップが獅子島に入り、水俣病被害者の声を聞いたのは1977(昭和52)年以来47年ぶり。

 獅子島の会から約10人が出席した。島外に週1回通院できるよう離島手当の1万円増額を求め、「物価も高騰し、現行の1000円ではとても足りない」と訴えた。

 水俣病を語り継ぐ事業や獅子島への慰霊塔建立なども国と鹿児島県に要請。熊本県天草市の御所浦島で開かれた懇談でも「水俣病患者連合」から離島手当の増額の要望が上がった。

 離島手当の増額について、伊藤氏は「私はできると思っている」と発言。他の要望についても「できるだけかなえられるよう指示する」と述べた。一方、具体的な予算措置などは明言しなかった。語り継ぐ事業や慰霊碑設置について、鹿児島県は「検討する」とした。

 患者連合が10日の懇談で求めた、検討の経緯の報告を確約する誓約書に伊藤氏と熊本県知事は署名しなかった。伊藤氏は「(回答する)日時は明確に答えられないが、真摯(しんし)に検討を進める」とし、実務者間で協議を継続する方針を示した。患者連合によると、19日に同団体と国などによる1回目の協議が開かれる予定。

 獅子島の会の滝下秀喜会長(64)は「期待にはほど遠い回答だったが、実際に離島の状況を見て感じるところもあったはず。鹿児島県知事にも来てほしい」。伊藤氏は「偏見や差別はなくなっていない。水俣病による分断をなくすためにできる限りのことをする」と話した。

 再懇談は8、10、11日、熊本県水俣市や長島町獅子島などであった。獅子島の懇談には伊藤氏や熊本県知事、鹿児島県副知事らが出席した。同県の塩田康一知事は参加しなかった。