離島手当は今どき月1000円、国の真剣さは伝わらない。そもそも「加害者の国に被害者がお願いするのはおかしい」 水俣病再懇談、獅子島が悲痛な願いに包まれた

AI要約

水俣病被害者獅子島の会と環境相との懇談で、離島被害者支援が不十分であることが浮き彫りになった。

被害者の医療・福祉充実は国や企業の責任であり、被害者が支援を求めるのは不適切であると指摘された。

行政には被害者の実態に即した支援を真剣に取り組む責任があると訴えられた。

離島手当は今どき月1000円、国の真剣さは伝わらない。そもそも「加害者の国に被害者がお願いするのはおかしい」 水俣病再懇談、獅子島が悲痛な願いに包まれた

 「月1000円の離島手当は少なすぎる」「被害者がお願いするのはおかしい」。鹿児島県長島町獅子島で開かれた11日の水俣病被害者獅子島の会と伊藤信太郎環境相との再懇談は、離島の被害者が求める支援とは程遠い状況が浮き彫りとなった。「真剣に取り組んで」。会場からは悲痛な声が上がった。

 山田光義さん(88)は2009年に成立した水俣病特別措置法で救済された未認定患者。視野狭窄(きょうさく)や手足のしびれに悩み、月に数回、フェリーと車を乗り継ぎ熊本県水俣市に通院する。陸路だけでも片道約1時間。月数千円のフェリー代に加え、ガソリン代の負担も大きい。離島手当では「交通費も全く補えない」と嘆く。

 獅子島に生まれ育ち、長く漁師を続けてきた。「漁師が水俣病を申請したら、商売が成り立たなくなる」との思いから長年症状を明かせなかった。認定申請した人が差別を受ける様子も見てきた。「ようやく声を上げられるようになってきたのだが」。変わらぬ国の姿勢にもどかしさを募らせた。

 「20年前より被害者の状況は悪化している。今どき1000円とは」。九州医療専門学校(佐賀市)社会福祉士通信学科長、荒木千史さん(47)が会員らに代わってマイクを握った。

 荒木さんは、水俣病の患者救済に尽くした故原田正純医師(さつま町出身)の教え子。熊本学園大学大学院時代は、原田医師とともに被害者支援に奔走した。獅子島の会から有識者として同席を頼まれた。

 「被害者の医療・福祉充実は加害者である国や企業の責任。被害者が『お願い』するのはおかしい」。時折涙をにじませて、実態に合った支援を訴えた。

 「ただ言葉を聞くだけではなく、被害者が言えないことに気付いて、考えるのが行政のプロである皆さんの仕事ではないか。真剣に取り組んでほしい」。3日間に及んだ対話の成果を求めた。