小麦を食べる快楽は麻薬に匹敵…「3食ラーメン」の人気絵本作家が山手線に約3mの材木を担いで乗ったワケ

AI要約

絵本作家・塚本やすしさんが20年間の糖尿病との闘いを綴る。ラーメンと酒が原因で暴飲暴食の日々を送り、体重増加に悩む。

医師の白澤卓二によると、小麦中毒が依存性の原因であり、小麦に含まれるタンパク質が快感をもたらすことが分かっている。

ストレスと食欲の関係にも言及し、食欲をコントロールすることが重要である。

50代の絵本作家・塚本やすしさんはこれまで20年間糖尿病とつきあってきた。原因は、暴飲暴食。ラーメンと酒が大好きだ。医師の白澤卓二は「小麦もアルコールも依存性があり、“小麦中毒”は自分の意志の力ではやめづらい」という――。

 ※本稿は、塚本やすし『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』(主婦の友社、監修:白澤卓二)の一部を再編集したものです。

■ラーメンがとにかく好きで3食ラーメンでもOK

 子どもの頃からラーメンが好きだ。正直、3食ラーメンでもまったく問題ない。むしろ幸せだ。暴飲暴食している時期は、1日に2回ラーメン屋に行くこともあった。連続してラーメン屋をハシゴすることもあったくらいだ。

 ダイエットをしていて、太ったりやせたりしていた頃も、ダイエット中も頭の中は大好きなラーメンのことばかりである。奥さんのことを考える時間より、ラーメンのことを考えている時間のほうが断然、多い。

 結果、体重はどんどん増えていき、ブクブクと太る。自分がぶざまな体形になっているのは知っていたが、鏡やショーウインドウに映る自分の姿は見ないようにしていた。見るときはおなかを引っ込めたり、ほほをすぼめたり、眉間にしわをよせて歌舞伎役者のような顔をしてごまかしたりしていた。

 外出先でトイレに行くと、鏡が目に入るのだが、自分の姿を見たくなく薄目になって手を洗っていた。

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【Dr 白澤’sアドバイス】

ラーメンの小麦には依存性がある……小麦中毒は意志の力ではやめられない

塚本さんのイラスト日記を読んで、最初に感じたのが「典型的な小麦中毒だな」ということです。驚かれるかもしれませんが、近年の小麦は麻薬と同じような中毒をもたらすことが、最近になって明らかになったのです。

中毒をもたらすのは小麦に含まれている「グルテン」というタンパク質です。

グルテンは胃で小麦ポリペプチドという物質(エクソルフィンとも呼ばれる)に分解されるのですが、この物質は血液脳関門(脳に有害な物質が入らないよう、脳と脳以外を流れる血液を隔へだてるフィルターのようなもの)を突破し、脳のモルヒネ受容体(アヘンやモルヒネ、ヘロインなどを摂取したときに快感を感じるセンサー)と結びつき、快感を感じさせるのです。

エクソルフィンによる快感は非常に強く、麻薬に匹敵します。その結果、何が起こるかというと、「食べているときが幸せ」「食べていないと落ち着かない」「どうしても食べたい」と、食べ続けてしまう中毒に陥ります。これは、麻薬中毒者が麻薬をやめられない行動原理と同じです。

私は、なにげなく口に入れている食べ物のなかに、依存性をもたらすものがあることを知り、それらを「マイルドドラッグ」と呼んで注意喚起しています。最初にマイルドドラッグに注目したときは、砂糖や塩、油、スナック菓子などに注目していましたが、今では小麦以上のマイルドドラッグはないと思っています。

もう一つ気になったのが、ストレスと食欲との関係です。ストレスを感じているとき、脳はそれを打ち消すために強い幸福感を求めます。

ヒトが幸せを感じるのは、欲が満たされるときです。私たちはさまざまな欲を抱きますが、そのなかでも原始的で強烈なものが食欲・性欲・睡眠欲の三大欲です。これらは動物が生きるための本能として持っている欲求になります。

とてもシンプルで強い欲なので、それらが満たされたときには強烈な快感を味わいます。三大欲のなかで、最も手っとり早くできるのが「食べること」です。

セックスは一人ではできませんし、睡眠もそういつでも眠ることはできません。食べることは脳にとって一番手軽な幸せのスイッチといえます。食欲をコントロールしているのは脳です。「食べたい」と思う心は、脳が幸福感を求めてそう思わせている、そう考えると、食べたいという欲求を抑えられるのではないでしょうか。

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