これから人間は「ゆっくりと衰えていき、やがて死に至る」…がん、突然死もないと医療未来学者が断言するワケ

AI要約

超高齢化社会を迎える日本。65歳から70歳に高齢者の定義が引き上げられる中、医療の発達によって人の生存年数が延びた背景を考える。

医療未来学者の奥真也氏は、「人が長生きする時代」における死に方の変化を指摘し、従来の「ピンピンコロリ」から「PPPPPK」に変化する可能性を示唆。

しかし、老化による心身の不調や認知症の発症など、人の寿命が延びる一方で新たな課題も生まれることが予想され、未知の領域で死を迎える社会が到来する可能性がある。

これから人間は「ゆっくりと衰えていき、やがて死に至る」…がん、突然死もないと医療未来学者が断言するワケ

超高齢化社会を迎える日本。先日報道された「老後4000万円問題」をはじめ、65歳から70歳に高齢者の定義を引き上げるといった議論がなされています。

その背景にはさまざまな要因がありますが、そのひとつは医療の発達です。生存年数が長くなっているのは、とてもありがたいことですが、一方で「人が死ねない時代」に突入したら時の社会的な備えは現在のところはっきり共有されていません。

未知なる領域を迎えるにあたり医療未来学者の奥真也さんは、「「死のあり方」が変わる」と言います。では人がそれだけ長く生きられるとしたら、どんな備えやしていかなければならないのでしょうか。

その答えを<希少がん「軟部肉腫」にかかり、障害者になった男性が《奇跡の日常》を取り戻すまで…医師が影響>に引き続き、同氏の著書『人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点』からお届けします。

シナリオどおりに生きていけるようになると、「生のあり方」だけでなく「死のあり方」も変わってきます。

従来、日本人の理想の死に方は「ピンピンコロリ」(PPK)だと言われてきました。PPKは、さっきまでピンピンして元気だったのに、急性疾患によって突然コロリと死ぬことを指しています。

現代は日本人の体力が向上し、平均寿命が延びましたから、PPKをとおり越し、PPPPPKが理想と言ってもいいかもしれません。

ところが、このKが難しいのです。かつて臨床の現場にいた医師としての実感から言っても、PPKで死ねる人はごく一握りだと思います。PとKのあいだに、老化による心身の不調が割り込んできているからです。

今後、多くの人が長生きするようになるものの、最終的には人の手を借りなければ生活できないほど衰え、弱った身体とともに長い期間を過ごすことになるでしょう。長くゆるやかな坂をゆっくりと下っていくようにして死を迎えることになります。

死を迎えるまでのあいだに、認知症を発症する人もいるでしょう。認知症は一般的に、年齢を重ねるほど発症率は上がっていきます。

臓器に寿命があるように、脳にも寿命があるという前提に立てば、たとえ認知症の有効な治療薬が開発されたとしても、脳の老化を永久に止めたり、若返らせたりすることはできないというのが私の考えです。

「死なない時代」に生きる私たちは、脳を含めたすべての臓器が限界まで老朽化して、ようやく死を迎えることになります。

このような死のあり方は、人類誕生以来、初めてのことです。私たちは未知の領域で死を迎えることになるのです。