これからの病院治療「並」と「特上」に分けられる…医療未来学者が警告する《長生きの質》のリアル

AI要約

日本の超高齢化社会に伴う医療の発展とその影響についての議論が盛んになっている。

医療費負担の増加や治療選択の格差が将来問題となる可能性がある。

長い人生を楽しむためには経済力と健康管理の重要性が高まっている。

これからの病院治療「並」と「特上」に分けられる…医療未来学者が警告する《長生きの質》のリアル

超高齢化社会を迎える日本。先日報道された「老後4000万円問題」をはじめ、65歳から70歳に高齢者の定義を引き上げるといった議論がなされています。

その背景にはさまざまな要因がありますが、そのひとつは医療の発達です。生存年数が長くなっているのは、とてもありがたいことですが、一方で「人が死ねない時代」に突入したら時の社会的な備えは現在のところはっきり共有されていません。

未知なる領域を迎えるにあたり医療未来学者の奥真也さんは、「経済力が長生きの質を決める」と言います。では人がそれだけ長く生きられるとしたら、どんな備えやしていかなければならないのでしょうか。

その答えを<すでに始まっている「セルフメディケーション税制」がこれから日本にもたらす《怖い影響》>に引き続き、同氏の著書『人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点』からお届けします。

現在では医療技術が発達し、私たちの治療の選択肢は昭和と比べて格段に増えました。しかし、今のように誰もが自分が好きなように病院にかかり、治療を選べる状態は長くは続かないのではないか、と私は考えています。

今は国民皆保険とフリーアクセスによって、ほとんどの人が安い負担額で医療の恩恵にあずかることができています。

しかし将来、保険でカバーされるのは致死的な病気だけになり、そうでない病気の治療は自己負担になることは、「お金の多寡」によって長生きの質が変わってくることを意味します。

致死的な病気に関しては、誰もが保険で面倒を見てもらえますから、死を免れることはできます。

ただ、命を取り留めた先の医療費は、致死的とみなされない限りは自分の懐から出すことになります。そこでお金を気にせずに治療を選べる人とそうでない人が出てくるのです。

未来の医療では、治療は侵襲性(体に傷害を与える可能性のこと)や予後のよしあしによってランク付けされていくと思います。

「特上」「並」とランクの高いほうから3種類の治療があった場合、「特上」を選べるのは富める一部の人だけになるでしょう。

たとえば、「特上」を選べた人は体の負担の軽い最新のロボットによる手術を受けることができますから、入院日数は短くてすみ、退院後の経過も良好。

いち早く日常を取り戻して、以前とあまり変わらない生活を送れるかもしれません。「並」を選んだ人は、手術は受けられるけれども従来どおり時間を要する開腹手術になるかもしれません。

肉体的負担が大きいため、リハビリに日数がかかり、退院後に仕事に復帰するのも「特上」を選んだ人より時間がかかります。

「特上」を選んだ人と、「並」を選んだ人。双方を比べると、命を取り留めた点は同じであるものの、その後の生活の質に差が出てきます。経済力が長生きの質を決めてしまうのです。

好むと好まざるとにかかわらず、私たちは長生きします。人生80年と人生120年では、その過ごし方は大きく変わってくるはずです。延びたぶんの人生をどう生きるかは考えておかねばなりません。

私は、どうせ長生きするなら、なるべく身体を大事にして「多病息災」でいる期間をできる限り長くし、人生120年をめいっぱい楽しんだほうがいいと考えています。

ただ、死はいつか必ずやってきます。どんなに健康管理をしようとも、私たちはいつかは死にますし、その前段階では健康を大きく損ねることもあるでしょう。

そのとき、ある程度のお金を手元に残してあることが重要です。身体が弱り、自分で自分のことができなくなる死ぬ前のつらい段階を楽しく、充実した時間に変えられる可能性があるからです。

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つづく<なぜ、死ねない?…人の寿命が「どんどん伸びている」意外なワケ《人生120年》説も浮上>でも「人が死ねない時代」に突入する前に備えておきたいことを医師の奥真也さんが明かします。