すでに始まっている「セルフメディケーション税制」がこれから日本にもたらす《怖い影響》

AI要約

日本は超高齢化社会を迎え、医療の発展により人々の寿命が延びているが、社会的な備えが不十分であると指摘されている。

将来、健康保険税の増加や自己負担の引き上げが予想され、治療の対象が限定される傾向にある。

医療用医薬品とOTC医薬品の差が縮まり、セルフメディケーション税制の導入など、自己処理や薬局、ドラッグストアでの対処が進む可能性が高い。

すでに始まっている「セルフメディケーション税制」がこれから日本にもたらす《怖い影響》

超高齢化社会を迎える日本。先日報道された「老後4000万円問題」をはじめ、65歳から70歳に高齢者の定義を引き上げるといった議論がなされています。

その背景にはさまざまな要因がありますが、そのひとつは医療の発達です。生存年数が長くなっているのは、とてもありがたいことですが、一方で「人が死ねない時代」に突入したら時の社会的な備えは現在のところはっきり共有されていません。

未知なる領域を迎えるにあたり医療未来学者の奥真也さんは、「さらに健康保険税が上がる」と言います。では人がそれだけ長く生きられるとしたら、どんな備えやしていかなければならないのでしょうか。

その答えを<なぜ、死ねない?…人の寿命が「どんどん伸びている」意外なワケ《人生120年》説も浮上>に引き続き、同氏の著書『人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点』からお届けします。

政府は2022年10月から、原則1割だった75歳以上の高齢者の自己負担を引き上げることを決定しました。具体的には個人年収200万円以上、夫婦で年収320万円以上の世帯は窓口負担が2割になります。

こうした自己負担増の流れは今後も続くのは間違いないでしょう。裕福な人にはたくさん払ってもらい、困窮している人の負担は軽くすることになるはずです。健康保険税の額が少しずつ上がっていくことも考えられます。

保険適用される病気も、少しずつ限定されていくでしょう。治療をしなければ患者さんが命を落とす確率が極めて高い「致死的な病気」については国で面倒を見るけれども、そうでない病気は国は面倒を見ない、という方向に進むと思われます。

「致死的な病気」として想定されるのは、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血、がん、結核など。命の危険に直結しない「非致死的な病気」としては花粉症、皮膚炎、虫歯、骨折、軽度の狭心症などが挙げられるでしょう。

「非致死的な病気」で病院にかかると相当な金額を払わなければなりませんから、薬を買って自分で何とかすることになります。

すでにこの流れは始まっています。医療用医薬品と同じ成分の医薬品が薬局やドラッグストアで売られるようになってきているのです。

かつては、医師が処方する「医療用医薬品」のほうが、薬局やドラッグストアで買える「OTC医薬品」(処方箋なしで買える薬)より成分が強めでよく効く、と言われていました。

現在は、医療用医薬品の成分をOTC医薬品に転用した「スイッチOTC医薬品」が多数登場しています。

認知度は低いものの、2017年には「セルフメディケーション税制」がスタートし、薬局やドラッグストアで購入した薬代を所得控除できるようになりました(対象になる薬にはレシートの項目に★などの印が付いていますので、ご覧になってみてください)。

そうなると、わざわざ病院へ行って医師に薬を処方してもらう理由は薄れていきます。今後、この流れがさらに加速していくのは間違いないでしょう。

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つづく<これからの病院治療「並」と「特上」に分けられる…医療未来学者が警告する《長生きの質》のリアル>でも、「人が死ねない時代」に突入する前に備えておきたいことを医師の奥真也さんが明かします。