「私はクスリにダマされた!転倒骨折、寝たきりの状態に…」高齢者の間で急増中《薬剤性パーキンソン症候群》の恐怖

AI要約

高齢者がクスリの副作用で病気になる事例が増加している。代謝機能の低下により副作用が出やすくなり、ポリファーマシーに陥りやすい。

特定のクスリが痛風やむくみの原因となることがある。必要のないクスリが追加で処方される場合もある。

一部のクスリは認知機能に悪影響を及ぼす可能性があり、薬剤性パーキンソン症候群などの状態を引き起こすことがある。

「私はクスリにダマされた!転倒骨折、寝たきりの状態に…」高齢者の間で急増中《薬剤性パーキンソン症候群》の恐怖

こんなにたくさんのクスリを飲んでいるのに、一向に持病が治らない。そんな経験、ないだろうか。

前編記事『「長年悩んだ高血圧、実はロキソニンのせいだったんです…」クスリのせいで病気になった人のたちの《悲痛な体験談》』では、高血圧に悩む85歳女性の体験談を通じて、「クスリのせいで」病気になるリスクを見てきた。引き続き、同様のケースを見ていく。

総合診療医学が専門で、群星沖縄臨床研修センター長を務める徳田安春氏も、このようなクスリが病気を引き起こした症例をこれまでたくさん診てきたという。

「そうした事例は、特に高齢の方に多いといえます。クスリは体内で効果を発揮したあと、腎臓で代謝されて尿に排出されたり、肝臓で代謝されて胆汁に排出されます。年をとると代謝機能が低下するため、副作用が出やすくなる。その副作用で出た症状を治すためにクスリが出されるようになると、あっという間にポリファーマシーに陥ってしまいます」

たとえば、ある高血圧の男性(70代)は降圧剤としてサイアザイド系利尿薬を飲んでいたのだが、しばらくすると尿酸値が高くなり、痛風の症状が現れるようになった。

「実は、サイアザイド系利尿薬には尿酸値を上げる作用があるのです。この男性は尿酸値を下げるアロプリノールというクスリを追加で処方されていたので、典型的な処方カスケードの事例でした」(徳田氏)

サイアザイド系利尿薬にはフルイトランやべハイド、ナトリックスなどがある。また、作用が似ているループ利尿薬にも尿酸値を上げる働きがあるので、注意しておきたい。ループ利尿薬でよく処方されるのはラシックスやダイアートだ。

糖尿病薬でもむくみの副作用が起きることがある。

「ある男性が糖尿病でピオグリタゾン(商品名アクトス)を処方されていたのですが、このクスリはむくみやすいと言われていて、この方もむくみで悩んでいました。

問題は、多くの医師がむくみと聞くと反射的に体の水分を排出するために利尿薬を出してしまうことです。この男性もフロセミドを出されていたのですが、ピオグリタゾンをやめればむくみは治るのですから、本来は必要のないクスリを処方されていたわけです」(徳田氏)

糖尿病薬と利尿薬をどちらも使っているという人は、注意したほうがいいだろう。

恐ろしいのは、クスリによって認知機能に悪い影響が出てしまうケースである。たとえば徳田氏が以前診た85歳の男性は、抗不安薬のクロチアゼパム、睡眠薬のエチゾラム、抗精神病薬のペロスピロンなど16種類のクスリを処方されており、そのせいで「薬剤性パーキンソン症候群」になってしまった。

「薬剤性パーキンソン症候群とは、手足が震えて動かなくなる、顔の表情が変えられなくなるなど、パーキンソン病と似たような症状がクスリのせいで起きるものです。

この男性は睡眠薬などの影響で体が動かなくなり、転んで太ももを骨折し、手術しなければならなくなりました。また、薬剤性パーキンソン症候群を治療するために、認知機能を低下させる副作用のある抗コリン薬も追加で処方され……と、負のスパイラルに陥っていました」(徳田氏)