あなたの不調は《薬漬け》から来ている可能性…副作用のせいでクスリが増える「処方カスケード」の罠にハマった人たち

AI要約

多剤併用によるクスリの副作用や処方カスケードについて語る愛知医科大学教授の宮田靖志氏。

多くの患者が必要以上のクスリを服用しており、減薬が必要なケースが増加している。

実例を挙げて、多剤併用がもたらす副作用や処方カスケードのリスクについて具体的に説明する。

あなたの不調は《薬漬け》から来ている可能性…副作用のせいでクスリが増える「処方カスケード」の罠にハマった人たち

「医師から一度出されたクスリは一生飲み続けなければいけない、と思っている患者さんは多いですが、まったくそんなことはありません。生活習慣が改善されて血圧が落ち着いてきたなら降圧剤はいったん減らしたり中止することもできますし、食事や運動療法で数値が下がったなら、高脂血症薬も中止できる。

ときには、すでに飲む意味がなくなっているクスリを、医師が惰性で出し続けているだけという場合さえあります。クスリにも『卒業』をするべきタイミングがあることを、知っておいていただきたいと思います」

こう語るのは、愛知医科大学教授の宮田靖志氏だ。宮田氏はこれまで「ポリファーマシー(多剤併用)」、つまりクスリを使いすぎている多くの患者に相談を受け、減薬に成功してきた実績がある。

いまや、複数のクスリを飲むのが習慣になっている人のほうが多数派の時代だ。東京都の調査によれば、75歳以上だと「5種類以上のクスリを処方されている」人が約64%いた。気づけば、薬箱がパンクしそうなほどクスリを持っている、という読者はきっと多いにちがいない。

だが、あまりに多くのクスリを飲み続けていると、それがかえって体の不調の原因になるかもしれない。事実、多すぎるクスリを見直すことで「見違えるほど元気になった」人が、近年では急増しているのである。

さっそく、実例を見てゆこう。まずは【ケース1】の75歳男性だ。この男性は40代のときに2型糖尿病になり、ずっと治療を続けているが、経過はいたって良好だ。

1年ほど前から腕がしびれる感じがあり、かかりつけの医師に相談したところ、どんどんクスリが増えていってしまった。もともと飲んでいた糖尿病薬などと合わせて、その数は最終的に16種類にものぼった。

この男性はしばらくのあいだ、腕のしびれを治すために鎮痛薬のロキソニンやリリカなどを飲んでいたが、今度は手足がひどくむくんでしまい、階段の上り下りすら難しくなってしまったという。

ところが、実はその後、かかりつけ医とは別の医師が男性を診察したところ、頸椎椎間板にヘルニアが見つかった。かかりつけ医は、とりあえず腕の痛みとしびれを抑える「対症療法」として次々とクスリを出していたのだが、本当はハッキリした原因があったのだ。

また、手足のひどいむくみも、前述した鎮痛薬や、糖尿病による神経障害に効くクスリのキネダックの副作用で生じていた疑いが強いことがわかった。

「クスリの副作用を治すために、また別のクスリが必要になり、さらに副作用が起こる……こうした連鎖を処方カスケードといいます。むくみは典型的な処方カスケードの症状で、NSAIDsという種類の鎮痛薬や、カルシウム拮抗薬という種類の降圧剤で起きることがよくあるのです」(前出・宮田氏)