【独自】「拘束され死亡」精神病院、「ゾウも倒れる」高用量鎮静薬投与(1)

AI要約

入院初日から急性統合失調症または双極性障害の薬が投与された可能性が指摘されている。

被害者は過剰な鎮静薬投与を受け、副作用や消化器系の問題が生じた可能性がある。

医療スタッフの不注意や過見があり、家族が病院側を遺棄致死で刑事告訴している。

【独自】「拘束され死亡」精神病院、「ゾウも倒れる」高用量鎮静薬投与(1)

 「患者に精神病的な症状があったというよりは、入院などの環境の変化によって拒否反応が深刻な状態だったのに、(別の方法でそれを緩和しようとはせずに)初日から急性統合失調症または双極性障害の躁(そう)に準ずる薬物を投薬したとみられます」

 富川(プチョン)Wジン病院に入院して17日後に死亡したPさん(33)の診療記録をハンギョレとともに確認した経歴10年目の精神科専門医のKさんは、5日に上のように述べた。遺族がPさんの死亡原因は薬物の副作用による腹痛と腸閉塞だと主張している中、実際にPさんに投与された薬はかなりの副作用がありうるにもかかわらず誤用、乱用されたというのだ。Kさんは、このような理由から家族ら法的代理人などには薬の効果と副作用に対する十分な説明が行われ、投薬後の患者の状態も綿密に観察されなければならないが、そのような過程がなかったと指摘した。実際に遺族は、病院が状態の悪化したPさんを放置したとみて、病院長のヤン・ジェウン氏ら6人の医療スタッフを、通常の業務上過失致死ではなく遺棄致死で刑事告訴している。

入院してすぐに多量の錠剤を投与

 ハンギョレは、遺族が病院側から確保した看護記録、経過記録、隔離・拘束実施日誌、安定室(隔離室)の防犯カメラ(CCTV)映像のリストなどの各種の診療関連記録の提供を受け、Kさんに分析を依頼した。真っ先に指摘されたのは、入院初期の高用量の鎮静薬投与だった。

 被害者のPさん(33歳、女性)は今年5月10日、ダイエット薬中毒の治療のために同病院に入院した。幼いころからの米国留学から帰国したPさんは、7年前から内科などで代表的な食欲抑制剤「ディエタミン」(テウン製薬)を処方されて服用していた。Pさんは過度な不眠や潔癖症などのディエタミン中毒症状から抜け出すために、ソウルのいくつかの大学病院に入院したり通院治療を受けたりしていたが、母親の勧めで富川Wジン病院に最大4週間の予定で入院することになった。

 入院初日、Pさんは警察に通報するなど、慣れない環境に対して強い拒否反応を示した。しかし出動した警察は面談後、何もせず帰ってゆき、被害者はあきらめて入院を受け入れた。

 隔離室のCCTV映像を見ると、入院初日の5月10日、着替えを拒否してしばらく医療スタッフともめていたPさんは、午後3時55分ごろ、医療スタッフに与えられた薬物を飲んでいる。経過記録を確認すると、この日服用した薬はペリドール錠5ミリグラム、ロラゼパム錠1ミリグラム、リスペリドン錠2ミリグラム、クアチン錠100ミリグラム、クエチンタブレット200ミリグラム。カンさんは「(医療スタッフは)一つの薬では十分な鎮静効果が得られないと判断したようだ。これらはほとんど抗精神病性、向精神性の薬物で、特にリスペリドンは高力価(単位ミリグラム当たりの効果が強い)製品」だと語った。これらの薬を混ぜて注射を作れば、ゾウさえ倒せるほどの「ゾウ注射」ができる。それだけ強い薬だということだ。当然にも副作用が伴う。

薬物で「意識低下、消化器および筋肉への副作用」

 その後の看護記録を見ると、被害者のPさんは眠気と感情の落ち込みを感じ、過度な鎮静状態を示しながらも、随時空腹を訴えて間食を要求している。これは被害者が入院前に服用していたディエタミンの成分であるフェンテルミンの禁断症状による食欲の増加と、精神科薬物の「食欲亢進(こうしん)効果」が重なったためである可能性があるという。5月14日の記録を見ると、「しどろもどろだ」という表現が用いられている。19日からはせん妄の症状も記録されている。Pさんの母親のイム・ミジンさん(仮名、60)はハンギョレに「入院後に娘に電話するといつも混迷していて、一度だけ面会した時はふらつくほどだった」と語った。

 カンさんは、精神作用薬の副作用で消化器と筋肉系に問題が生じたとみられると語った。カンさんは「精神作用薬のよくある副作用に抗コリン作用(口内の乾燥、腸運動の低下、消化不良、便秘、排尿困難、眼球の乾燥、せん妄など)とともに筋肉系の副作用(筋肉の震え、急性筋緊張異常、アカシジア、神経弛緩薬悪性症候群など)が起こりうるが、それに対する医療スタッフのチェックが序盤にほとんどなかった」と語った。

 特に「せん妄は精神科的な副作用ではなく、消化器系および筋肉の副作用が積み重なって生じた可能性があるが、それを精神科的な症状としてのみ判断して、薬で抑えようとしたようだ」と指摘した。このような過程で、腸の吸収と蠕動(ようどう)運動の停滞が続き、腸閉塞や敗血症性(全身性炎症反応症候群)ショックが進行する可能性があるという説明だ。終盤の「大便を垂れ流した」という診療記録も、消化器の閉塞に伴って排便の調節ができていなかったことを示していると述べた。(2に続く)

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )