東大教授なのに「汚染地」や「内戦国」が職場:interrobang:…発展途上国を飛び回り格差の解消に奔走する「国際地域保健学」とは

AI要約

若年性アルツハイマーの恐怖に直面する脳外科医カップルの旅路が描かれる

東京大学で国際地域保健学を専攻していた脳外科医の忙しい日常が明かされる

晋が厳しい学生指導や開発途上国への出張で日々奮闘する姿が描かれる

東大教授なのに「汚染地」や「内戦国」が職場:interrobang:…発展途上国を飛び回り格差の解消に奔走する「国際地域保健学」とは

「漢字が書けなくなる」、「数分前の約束も学生時代の思い出も忘れる」...徐々に忍び寄ってくる若年性アルツハイマーの恐怖は今や誰にでも起こりうることであり、決して他人事と断じることはできない。

それでも、まさか「脳外科医が脳の病に侵される」などという皮肉が許されるのだろうか。そんな「運命」に襲われながらも、悩み、向き合い、望みを見つけた東大教授と伴侶がいた。

その旅の記録をありのままに記した『東大教授、若年性アルツハイマーになる』(若井克子著)より、二人の旅路を抜粋してお届けしよう。

『東大教授、若年性アルツハイマーになる』連載第6回

『「なかなか漢字が出てこない」はヤバい病気の予兆:interrobang:東大卒の脳外科医が突如として”漢字の練習”を始めた裏にあった「残酷な現実」』より続く

東京大学で晋が専門にしていたのは、「国際地域保健学」という分野でした。もともと脳外科が専門でしたが、転進したのです。

国際地域保健学とは、統計情報や現地調査をもとに、地域の健康水準や保健医療サービスの現状を明らかにし、格差をなくす方法を研究する学問です。晋は大学での講義のほか、学生への論文指導、研究資金の調達、関係機関との折衝、自分の原稿の執筆などといった仕事に追われていました。

晋の後任の先生によると、晋の学生への指導はかなり「厳しかった」そうです。学生にはまず、夏休みに論文を100本読むことを課す。同時に助教たちが、統計学や疫学などの学問的トレーニングを施す。そうやって鍛えられた学生を現場に派遣し、現地の研究者とデータを集めさせる。集まったデータを分析して論文にする。そんなことをしていたと、ある雑誌で語っておられました。

もちろん、晋自身が現場に赴くこともあります。だから仕事のなかでも目立って多かったのが、いわゆる開発途上国への出張でした。学生の指導以外にも、医療支援の査察や評価のため、しょっちゅう飛行機で飛び回っていたのです。直行便がない地域も多く、トランジット(乗り継ぎ)を含む移動時間は、いつもかなり長くなります。ガスや水道など、生活に必要なインフラがない場所、治安の悪い地域に滞在することもめずらしくありません。