「なかなか漢字が出てこない」はヤバい病気の予兆!?…東大卒の脳外科医が突如として”漢字の練習”を始めた裏にあった「残酷な現実」

AI要約

若年性アルツハイマーの恐怖が襲いかかる中、脳外科医夫婦の旅路が描かれる。

夫の認知症による日記を発見し、漢字練習の姿に驚く妻。

夫が漢字練習をしていた背景と、不安が襲う日々が明らかになる。

「なかなか漢字が出てこない」はヤバい病気の予兆!?…東大卒の脳外科医が突如として”漢字の練習”を始めた裏にあった「残酷な現実」

「漢字が書けなくなる」、「数分前の約束も学生時代の思い出も忘れる」...徐々に忍び寄ってくる若年性アルツハイマーの恐怖は今や誰にでも起こりうることであり、決して他人事と断じることはできない。

それでも、まさか「脳外科医が脳の病に侵される」などという皮肉が許されるのだろうか。そんな「運命」に襲われながらも、悩み、向き合い、望みを見つけた東大教授と伴侶がいた。

その旅の記録をありのままに記した『東大教授、若年性アルツハイマーになる』(若井克子著)より、二人の旅路を抜粋してお届けしよう。

『東大教授、若年性アルツハイマーになる』連載第5回

『「忘れるようになったため日記をつけることとする」…認知症の夫の部屋で見つかった日記には“病に蝕まれていく日常”が綴られていた』より続く

認知症になった夫の部屋から一冊の日記が見つかった。「漢字を相当忘れるようになったため日記をつけることにする」という書き出しから始まる日記の中には、病に蝕まれつつも仕事や日常生活を懸命に営む夫の日々がつづられていた…。

短期間とはいえ、彼がこんな記録をつけていたという事実に目を見張る思いでした。しかしそれ以上に驚かされたのは、余白に書き込まれた無数の漢字練習のあとです。

「やはり漢字の練習をしなければ」

そんな書き込みもあります。

晋は昔から達筆でしたが、漢字は乱れ、崩れていて、明らかに間違っている字もあるのがわかりました。当時の晋は、普段はパソコンで仕事をしていました。文字を手書きする機会といえば、手帳に予定を書き込むときくらいだったはず。なぜこの歳になって、漢字の練習などしていたのか。

日記には「漢字を相当忘れるようになった」とありましたが、彼はあるとき漢字を思い出せなくなっていることに気づいたのでしょう。「認知症」の文字が、頭をかすめます。不安に駆られますが、まだ確信は持てません。

加えて教授として日々の仕事に追われる身でしたから、できることは限られています。そこで書字の練習のため人知れず用意したのが、このノートだったのです。出張が多い仕事だったので、携帯しやすい小さめのものを選んだに違いありません。そして自宅で、あるいは滞在先で、手が空いた夕方や深夜に、ひとりノートに向かっていたのです。