フライト中の飲酒は避けて 低酸素症を招き心臓にも負担

AI要約

長時間の国際線フライトでは機内でのアルコール摂取が睡眠の質を下げ、心臓に負担をかけることが明らかになった。

気圧の低い環境での飲酒は血液中の酸素運搬能力を低下させ、低酸素症を招く可能性がある。

研究では健康な参加者を対象に、低圧室での睡眠とアルコール摂取がどのように影響するかを調査している。

フライト中の飲酒は避けて 低酸素症を招き心臓にも負担

 長時間に及ぶ国際線のフライトでは、渡航先との時差を考えると少しでも多く眠っておきたいと考える人が多いのではないでしょうか。しかし、機内で提供されるアルコールの助けを借りようと考えているとしたら、認識を改めたほうがよさそうです。このほどドイツの研究者たちは、気圧の低い飛行機内での飲酒は低酸素症を招き、睡眠の質を下げ、心臓にも負担をかけることを明らかにしました(*1)。

●気圧が低い機内では、血液が酸素を運搬する能力が低下する

 国際線のフライトは飛行高度が高く、機内の酸素の圧力(酸素分圧)が低くなっているため、血液中の酸素飽和度(SpO2)も低下します。今回研究者たちは、キャビン内での飲酒が睡眠と酸素飽和度、および心拍数に及ぼす影響を検討する実験を行いました。

◆動脈血酸素飽和度(SpO2):心臓から全身に運ばれる血液(動脈血)に含まれるヘモグロビンのうち、何%が酸素と結合しているかを示す値。100%に近いほど全身にくまなく酸素が運ばれている状態を示し、90%を下回ると低酸素症とされる。

 実験は4日間にわたって行われ、18~40歳の健康な48人が参加しました。48人のうち24人を模擬フライト群、24人を対照群とし、模擬フライト群は、長距離フライト中のキャビンの気圧(0.74気圧=753hPa)と飛行機のエンジン音を再現した低圧室で、対照群は通常の気圧の睡眠検査室で、それぞれ2晩を過ごしました。

 参加者たちが低圧室または睡眠検査室で睡眠をとったのは、1日目と4日目の午前0時から4時までです。そのうち一晩は、ビール2.5缶(900mL)またはワイン3杯程度に相当する純アルコール(37g程度)を含む量のウォッカを、23時15分に飲むよう指示されました。参加者全員に睡眠ポリグラフ検査(睡眠中の脳波や呼吸の状態、SpO2、心拍数などを測定する検査)を行いました。

 2日目と3日目は回復日とし、参加者たちは23時から7時まで8時間眠りました。