思春期女子の悩みは「ユースクリニック」へ…病気から交際の悩みまで

AI要約

10代女子向けのユースクリニックが若者の悩みに対応し、性的グルーミングなど重要な問題も取り扱っている。

オープンユースクリニックやワンコインユースクリニックで無料相談を受け付け、専門スタッフが個別対応を行っている。

親に言い出しづらいことがある子供たちに、ユースクリニックが頼りになる存在であることを周知する必要がある。

思春期女子の悩みは「ユースクリニック」へ…病気から交際の悩みまで

 だれかに相談しづらい悩みを持っている10代女子のみなさん、「ユースクリニック」が助けになるかもしれない。

 ヘアアイロンで毛先をカールしてもらっている女の子もいれば、恋人の行動がデートDVかをチェックできる「デートDVチェッカー」を見ている女の子もいる──。「藤沢女性のクリニックもんま」(神奈川県)で毎月第1土曜日14時から17時に開かれている「オープンユースクリニック」での光景だ。

「2021年7月から若者を対象にしたオープンユースクリニックを始めました」

 こう話すのは、産婦人科医の門間美佳院長。オープンユースクリニックは無料で予約不要、性別問わず「だれでも気軽にどうぞ」だが、1対1で相談したい人には、19年の開院当初から「ワンコインユースクリニック」を設けている。

 こちらは1回500円(20~30分)で助産師、看護師、思春期保健相談士ら専門知識を持ったスタッフが対応。基本的に13~18歳の女性が対象で、要予約であるものの保険証は不要だ。相談内容は、月経不順、妊娠不安、月経痛、月経前のイライラなど婦人科領域から、彼氏との関係や摂食障害などさまざま。

「『医療機関を受診するほどじゃないけど』といった相談も多いです。薬の処方など医療的介入が必要と判断した場合は、クリニックの予約を取り、後日保険証持参で受診してもらいます」

 門間院長がユースクリニックを開いたきっかけは、17年、18年と平塚市で起こった新生児遺棄事件。困っている女性が気軽に相談できる場所が必要と痛感する中、スウェーデンをはじめ北欧でポピュラーな存在であるユースクリニックを知った。

 スウェーデンには「ユースクリニックのためのガイドライン」があり、「人権尊重の考えを基盤とし、“若者の性と生殖に関する健康と権利”に焦点を当て、身体的・精神的なウェルビーイングを促進することを目的とする」と記されているという。

「若者中心の場であることが重要で、専門知識を持ったスタッフが若者を尊重した対応をしている。人口1000万人ほどのスウェーデンには約250カ所のユースクリニックがあり、中学、高校の保健の授業では、困ったことがあったらユースクリニックを利用するようにと学ぶそうです」

■性的グルーミングへの警告も

 北欧のケースを参考に、日本でもこの数年、ユースクリニックを設ける婦人科クリニック、NPO法人、自治体が少しずつ増えてきている。ただ、まだ正確な定義がないので、各ユースクリニックがそれぞれのスタイルを模索しながらサービスを提供している。

「当クリニックでは、オープンユースクリニックが、ユースクリニックや婦人科へとつながる『入り口』になればいいと考え、いわゆる“普通の子”も関心を持ってくれるよう、爪心理士さんの無料ネイルサービス、性教育インスタグラマーとのコラボの無料パーソナルカラー診断なども取り入れています。スタッフとの触れ合いを通し、悩み事や心配事を打ち明けられるケースもありますし、話を聞く中で、『それはデートDVや性的グルーミング(性的な目的で子供に近づき好意を利用して手なずける)に該当する』と、伝えられることもあります」

 ワンコインユースクリニックでの相談事例としては、「彼がコンドームをつけてくれない(年齢差が10歳以上あるカップル)」(20歳大学生)、「デートDVを受けているのかもしれない」(18歳高校中退)、「彼氏から卒業旅行に誘われている。母を裏切りたくないが、彼との旅行にも行きたい」(18歳高校3年生)など。娘が性的グルーミングに遭っているのではないか、とまず母親が婦人科クリニックに来院し、後日、娘がワンコインユースクリニックを受診した事例もある。

 夏休みが始まった。子供にとって、親に言い出しづらいことはたくさんある。「こんな場所もあるよ」とそっと伝えられるよう、親も「ユースクリニック」を知っておきたい。

 なお、ネットで「ユースクリニック」と検索すると、各地のユースクリニックがヒットする。