キノコをたくさん食べる女性は認知症リスクが低い

AI要約

キノコを摂取する日本人女性は、要介護認知症のリスクが低いことが研究で示された。

調査では、キノコの摂取量と要介護認知症の関係が男女で異なり、女性ほど摂取とリスクの逆相関が見られた。

結果から、キノコは女性の要介護認知症リスクを下げる可能性があることが示唆された。

キノコをたくさん食べる女性は認知症リスクが低い

 日常的にキノコを摂取する日本人女性は、介護を要する認知症になるリスクが低いことが、筑波大学などの研究者が行った研究(*1)で明らかになりました。

●日本人に身近なキノコには食物繊維や抗酸化物質が豊富

 日本人が1年を通して食べているキノコは、食物繊維と抗酸化物質を豊富に含んでおり、認知症リスクを下げる可能性があることが示唆されています。そこで筑波大学の青木鐘子氏らは、日本人を対象に、キノコの摂取と認知症リスクの関係を男女別に調べることにしました。

 分析に用いたのは、秋田県、茨城県、大阪府内の3つの自治体で、1985~1999年に行われた心血管リスク調査に参加した、40~64歳の人たちのデータです。24時間思い出し法を用いて食事の内容を調査し、その後2020年までの間に、介護が必要な認知症(要介護認知症)を発症した人がどのくらいいたかを調べました。

 「要介護認知症」は、以下の条件を満たす場合としました。介護保険制度に基づく要介護認定を受けている「認知症高齢者の日常生活自立度」がIIa超(日常生活に支障をきたすような症状、行動や意思疎通の困難さが多少見られるが、誰かが注意していれば自立した生活ができる状態、あるいはそれより悪い状態)

 認知症の種類に関する情報は得られなかったため、脳卒中歴のある人の認知症は血管性認知症である可能性が高く、脳卒中歴のない人の認知症にはアルツハイマー病が多いと推定しました。

 条件を満たした3739人(男性1650人、女性2089人)を分析対象にしました。平均16年の追跡で、670人(男性260人、女性410人)が要介護認知症を発症しており、1000人-年当たりの発症率は男性が10.2、女性は12.0でした。

 キノコ(シイタケ、シメジ、エノキタケ、ナメコ)の1日の摂取量に基づいて、対象者を摂取なし(2560人、うち51.7%が女性)、0.1~14.9g(528人、65.0%が女性)、15.0g以上(651人、65.0%が女性)の3群に層別化しました。摂取なし群を参照群として、要介護認知症との関係を検討したところ、男性では、キノコの摂取量と要介護認知症の間に、統計学的に有意な関係は見られませんでした。

 一方女性では、キノコの摂取量は要介護認知症のリスクと逆相関していました。キノコを摂取しない女性と比較すると、0.1~14.9gのグループでは要介護認知症のリスクが19%低く、15.0g以上のグループでは44%低くなっており、摂取量が多いほど認知症リスクは低いことが示されました。

 脳卒中歴のある女性では、キノコの摂取量と認知症の関係は有意ではありませんでしたが、脳卒中歴のない女性では、0.1~14.9gのグループでリスクが34%低く、15.0g以上のグループでは45%低くなっていました。

 さらに、女性の要介護認知症リスクは、キノコの1日の摂取量が10g増加するごとに11%低下し、脳卒中歴のない女性では12%低下することが示唆されました。

 今回得られた結果は、日本人女性のキノコの摂取は、要介護認知症(おそらくはアルツハイマー病)の発症リスクの低下と関係することを示しました。

 なお、キノコ10gの摂取は、わずかな努力で達成できます。例えば小さな生シイタケなら1.5個程度、シメジなら5本程度で10gになります。エノキタケは小パックがおおよそ100g、大パックはおおよそ200g(ただし廃棄部分を含む)、ナメコは一袋が100g程度なので、料理に少し加えるだけで、10gや20gは簡単に摂取できます。

*1 Aoki S, et al. Br J Nutr. 2024 May 14;131(9):1641-1647. Epub 2024 Jan 19.

(大西淳子=医学ジャーナリスト)