「自分のことが一番信用できない」若年性アルツハイマー型認知症 それでも一人暮らしを選ぶ59歳美香さんの決意
美香さんは若年性アルツハイマー型認知症の患者で、軽度の記憶障害や物の認識力の低下に悩んでいます。
症状の進行により日常生活に支障をきたし、食事やカラオケなどの日常行動にも困難を感じています。
美香さんは自信を失い、他人への信頼も失うようになり、認知症の進行による心の苦しみを抱えています。
国内に1002万人いると推計されている認知症患者(※軽度認知障害を含む 2022年の厚労省調査より)。その認知症の治療薬として去年9月に承認されたのが、国内初の新薬「レカネマブ」です。承認から10か月、見えてきた希望と課題とは?レカネマブの投薬治療を行う50代の患者を取材しました。
大阪市内でひとり暮らしをする美香さん、59歳。若年性アルツハイマー型認知症の患者です。症状はまだ軽度ですが、聞いたことややったことを忘れるなどの記憶障害があります。取材した日、近所の店に弁当を買いに行きますが…
(美香さん)「ごめんなさい。ちょっと待って」
通い慣れた道のはずが行き方がわからなくなってしまいました。
(美香さん)「どうやって行ってたかな。忘れた。やばい」
このように突発的に記憶が飛ぶこともあります。無事店にたどり着き、弁当を買うことができました。しかし、自宅に帰ってから様子が落ち着きません。
(美香さん)「お弁当どこやったっけ。お弁当どこいったっけな。玄関かな」
(記者)「美香さん、これだと思います。あの白い袋」
(美香さん)「お弁当はお弁当としてあると思っていたら大間違いなのね。袋に入ってたんか…」
記憶障害だけでなく、空間や物を認識する力も衰えてきています。
(美香さん)「お茶あったかな。きのうのかな?わからない…。うわ、どうしよう…」
(記者)「お茶ですか?」
(美香さん)「うん」
(記者)「それごま油です」
(美香さん)「ごま油!?やばい~めちゃめちゃやばい。本気でお茶やと思ってた」
病気の診断を受けた5年前から症状は少しずつ進行していて、1人で食事をするのも難しくなってきました。好きだったカラオケからも足が遠のき、塞ぎこむようになりました。
(美香さん)「『覚えてる歌ばっかり歌ったらいいやん、行こうや』と言われても、気分がすごくどよどよになってしまって。自分のことが一番信用できないし、だから他の人たちのことも100%信用できないようになってきているのがちょっと最悪やなって」