8時間睡眠と週に1度の茶道で脳をリフレッシュ!漫画家・東村アキコさんに聞く、驚異の集中力の源

AI要約

東村アキコさんは、漫画家として多くのヒット作を生み出しており、現在も複数の連載を抱える忙しい日々を送っている。

彼女は仕事に対してストレスを感じることなく取り組み、日中は集中して漫画を描き、夜は質の良い睡眠を取ることで脳の回復を図っている。

さらに、若い感覚を持ち続けるために新しいジャンルにも挑戦し、常に最新のトレンドを追い求める姿勢を貫いている。

8時間睡眠と週に1度の茶道で脳をリフレッシュ!漫画家・東村アキコさんに聞く、驚異の集中力の源

漫画家

東村アキコさん

宮崎県生まれ。1999年漫画家デビュー。2010年『海月姫』で講談社漫画賞、15年『かくかくしかじか』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。『ママはテンパリスト』『偽装不倫』などヒット多数。『まるさんかくしかく』のほか、『ちゃおプラス』にて『まるさんかくしかく+』、『ココハナ』にて『銀太郎さんお頼み申す』連載中。

──ギャグ、歴史もの、少女漫画に大人の恋愛と、多くのヒット作を生み出していらっしゃいます。まずは現在抱えるプロジェクトを教えてください。

 漫画は連載が2~3本で月に原稿を約80枚ですね。例えば『まるさんかくしかく』は、真っ白な状態から2日ほどで仕上げます。それから芸人のプロダクションとその劇場経営、韓国での漫画連載とドラマ、あとはまだ言えないですが、動いている案件がいくつか。そんな感じです。

──猛烈な仕事量に思えますが?

 全然普通だと思いますよ。昔の漫画家のスピードみたいな感じです。

──漫画はストーリーを作るのに苦しんだりする時間もありますよね?

 それはないです、全く。子育ても落ち着きましたし、机に向かって漫画を描くことにストレスはありません。仕事は平日の昼12時から夜7時までと決めていて、その間はずっと集中してます。

 学生や会社員の方も1日7~8時間は授業を受けたり仕事をするわけで、特別なことではないですよね。それ以外はご飯を食べにいったり料理をしたりドラマや映画を観て、自由に過ごしています。

──オン・オフがきちんと分かれているのですね。集中して疲れた脳はどのように回復していますか?

 どんなに忙しくても睡眠は絶対に8時間以上と決めていて、10時間取ることもあります。寝ないと仕事がはかどらず、気分も落ち込み、てきめんに調子が悪くなる。

 飲みにいっても1時には帰宅して寝ます。質のいい睡眠をこの20年心がけていますね。家具やインテリアはこだわりませんが、ベッドや枕は良質のものを。なるべくお金をかけています(笑)。

──寝具以外に深く眠るコツは?

 お酒をあまり飲まないようにしています。ワインなら2杯くらい。若い頃はお酒をたくさん飲んでバタッと寝てしまうこともありましたが、今は寝酒もしません。茶道の師匠にそう教わって実践していますが、意識するのはそれくらいですね。

 漫画家の仕事は自宅でできて、自由で、人間関係のストレスもない。〝ラクなほうの仕事〟と思ってやっているのが大事なのかもしれません。

──仕事を好きになることが大事だと?

 要するにマインドの問題かも。嫌だ嫌だ……と思いながらだと脳が疲れて夜眠れなくなったり、ストレスを感じて調子が悪くなるのかもしれません。

──プロダクション社長など漫画以外の仕事も「好き」の気持ちが強いですか? 

 お笑いはたくさんの人と関わります。昔から大勢でいるのが好きなんです。疲れた時ほど、大人数で遊びにいったりバーベキューをしたりします。そうした時に会いたいのは誰でもいいわけではなく、気心の知れた人ですけど。 

──疲れた際の気持ちの切り替え方を知り、それを実行されているのですね。「NFTアート」や、縦読みのwebコミック「ウェブトゥーン」と、新しいものにも挑戦されています。そこに壁を感じないのも、もともとの性格に理由が?

 埋もれてしまうのが嫌で。時代がどんどん変わるなら、それについていかないとおもしろくない。「昔はよかった」と昔話ばかりをする人になりたくなくて。若い感覚のままおばあさんになりたい。

 お金を稼げるかどうかは興味がなくて、最新のものに関わっていたいんです。そのためにも若い人と仕事をしていたい。

 例えば音楽でも、彼らの間で流行っているものを聴く。そういうものが「いいもの」と思っているし、職業柄、流行語も知っておかないといけないし。

 年齢を重ねながらずっと若い感覚を持てるならいいですが、そんな人はなかなかいないのも事実。あるハイブランドのデザイナーは年上でしたが、若い人と話しているみたいでした。こういう一流の方と仕事をしたいと思いました。

──ほかに脳の疲れ回避のために実践していることはありますか?

 私の場合は茶道かもしれません。何も考えない時間ができます。静寂の中で座禅を組むようにぼ~っとすると、思考がリセットされるよう。とても貴重です。お稽古は週1回、4~5時間です。

──途中で「あの仕事を忘れていた」など頭をよぎったりすることは?

 茶道はそうならないようにできています。庭を通って茶室に入り、お香が焚かれていて。入り口からそういう演出がなされた世界で、外界とは切り離された空間にみんなで入ります。旅行中に日常を思い出さないのと同じですね。〝和のサロン〟のようなもので、タイムスリップしたような感覚で、歴史の話をしたりします。

──何事にもポジティブな印象があります。ご自身では、その理由は何だと?

 性格や才能は遺伝子で決まっていると思うんです。片づけが苦手ですが、それはもうできないので! 諦めていて、それで落ち込んだりしません。あと宮崎育ちなのですが、宮崎の人はみんな明るいです(笑)。すべては遺伝子でプログラミングされた性格なのかもしれませんね。

後編では、漫画家以外の仕事も手がけている東村さんの現状について教えてもらった。

取材・文/浅見祥子 撮影/小倉雄一郎(書影、小学館写真室)