大阪府の8割の小売店でコメ品切れ発生だが…吉村知事「備蓄米放出しろ」が腑に落ちないワケ

AI要約

吉村知事が政府に備蓄米の放出を要請する中、コメ不足が全国的に広がっている状況が続いている。

坂本農相は慎重な姿勢を示し、民間流通を優先して備蓄米の放出には否定的だが、吉村知事は価格下落を恐れる理由が理解できないと反論している。

大阪府内のコメ不足の原因は子育て支援策にもあると指摘されており、支援策による需給の歪みが在庫不足を招いている可能性がある。

大阪府の8割の小売店でコメ品切れ発生だが…吉村知事「備蓄米放出しろ」が腑に落ちないワケ

「需給が逼迫しているのであれば、倉庫に眠らせておく必要はない」

 全国的なコメ不足の中、2日の会見で政府備蓄米の放出を再び要請した大阪府の吉村洋文知事。現在スーパーなどでコメの品切れが続き、7月から出荷が始まっている新米が店頭に入荷しても、その多くが前年比2倍近い高値で販売されている。

 大阪府の調査では、府内の8割の小売店で品切れが発生しているという。

 しかし、坂本哲志農相は「民間流通が基本となっているコメの需給や価格に影響を与える恐れがあるため、慎重に考えるべき」と話し、状況は次第に改善していくと備蓄米放出に否定的だ。それに対して、吉村知事はこう反論している。

「(備蓄米の開放で)価格が下がるというが、むしろなぜ、それが否定されるのかがよくわからない。現場感覚からすると少し違うのではないか」

■子育て支援策で逼迫に拍車

 だが、大阪府内のコメ不足の原因は府の施策にあるとの指摘もある。

「大阪府は物価高を背景に、昨年2回、子育て世代にコメなどの食品を購入できるクーポンを配布しています。今年6月にも同様の支援策を実施しましたが、実際のところ、卸売業者はこれに対応する在庫を用意できていませんでした。期限のあるクーポンによって余計な需要が喚起されたことで、大阪の市中在庫は一気に逼迫したため、卸売り間の売買価格は大幅に吊り上げられました。大阪のスーパーでは6月あたりから、通常実施されるコメの特売がなくなりました」(米流通評論家の常本泰志氏)

 6月は、年に1度の新米シーズン直前。さらに、前年度産のコメも“くず米”といわれる網下米の不足とインバウンド需要で在庫が逼迫していたため、残念ながらせっかくの子育て支援策も非常に間が悪かったという。

「吉村知事は備蓄米を放出しない農水省を悪者扱いしていますが、本来、備蓄米の放出は不作の際に実施されるべきものです。昨年の作況指数は101なので、これに該当しません。令和6年産がもし不作だったときのために、100万トンほどある備蓄米はセーブしておくべき」(常本泰志氏)

 吉村知事の「備蓄米を放出しろ」発言に腑に落ちないという声が聞かれるわけだ。