50~60代の女性に多い「猫背」 放っておくと腰痛や便秘、認知症の原因にも! 名医が教えるタオルストレッチで姿勢を改善

AI要約

猫背が健康に与える悪影響について解説。猫背は病気のリスクを高め、体やメンタル面に様々な影響を与える。

猫背の原因や女性、更年期以降のリスクについて詳しく説明。猫背が持つ多くの弊害に注意が必要。

猫背がもたらす体への影響や内外への悪影響について具体的な例を挙げて解説。猫背を改善することの重要性が強調されている。

50~60代の女性に多い「猫背」 放っておくと腰痛や便秘、認知症の原因にも! 名医が教えるタオルストレッチで姿勢を改善

「姿勢が悪い!」「ちゃんと伸ばしなさい」。親や学校の先生にそう一喝された記憶のある人は少なくないだろう。「見た目が悪いだけでしょ?」とあなどってはいけない。自分でも気づかぬうちになっている猫背は病気のリスクを高め、あなたの健康を奪っている可能性がある。セルフチェックリストでまずは自分の状態をチェックし、ストレッチで猫背を矯正しよう!

小林篤史さん/柔道整復師・猫背矯正マイスター

高平尚伸さん/整形外科医・北里大学医療衛生学部教授

 背筋を伸ばし、胸を張って生きるーー自分に自信をつけ、人生をポジティブに好転させる方法として、たびたび言及されてきたが、近年、医学と健康の専門家の間でもその重要性が注目されている。

 猫背矯正マイスターで柔道整復師の小林篤史さんは、そもそも日本人には猫背が非常に多いと指摘する。

「その割合は9割にものぼるといわれています。欧米人に比べて筋肉量が少ないことが理由で、猫背はほとんどの場合、背骨ではなく骨盤の傾きが関係しています。人間の上半身は骨盤を土台として筋肉と骨で支えられているので、支える筋力がなく骨盤がゆがむと体の重心が崩れてしまう。そこでバランスをとろうとして、本来S字である背骨のカーブが曲がって猫背になります。

 そうなると当然、見た目の変化も大きくなる。背中が丸くなるだけでなく、あごと首が前に出て、お腹がゆるんでぽっこりするのでだらしなく見えます。加えて女性は骨盤が広くてウエストが細く、筋力が男性より少ないため、より猫背になりやすい」

 女性ホルモンの分泌が減少する更年期以降は、より気をつける必要があると小林さんは続ける。

「骨密度が低下して骨が弱くなるうえ、加齢による筋力低下で背中が曲がりやすくなる。実際、家族から“最近、猫背になってきた”と指摘されて相談にいらっしゃる50~60代の女性は非常に多いです」

 専門家が懸念するのは見た目の変化だけではない。

「猫背の姿勢が続くと頭の重さがダイレクトに肩や首にかかって『こり』につながります。こりが慢性化し、筋肉がこわばって血管が圧迫され、脳へと送られる血液の循環が悪化すると、頭痛の原因になります。

 ほかにも前かがみの姿勢でいると胸郭(きょうかく)が広がりづらくなって肺が圧迫され、ちょっとした運動で息が上がりやすくなるなどさまざまな弊害がある。免疫力が低下して、かぜもひきやすくなります」(小林さん)

 負担がかかるのは上半身にとどまらない。北里大学医療衛生学部教授、整形外科医の高平尚伸さんが言う。

「前かがみの状態で立とうとするとバランスがとりづらくなり、体のあらゆる部分に余計な力がかかります。その結果、腰痛はもちろん、ヘルニアになることもあり、股関節や膝の痛みも引き起こします。

 そうした体の外側への影響に加え、胸や胃が圧迫されて胃酸が食道に逆流し、逆流性食道炎のリスクが上がるなど内部にも大きな負荷がかかるのです」

 小林さんが言い添える。

「胸部の圧迫で胃が押し下げられて、胃下垂(いかすい)になる人も珍しくありません。腸の左側、骨盤の脇の直腸から肛門に向かってのS状結腸が硬くなって、便秘や下痢を訴える人もいます。

 背中が曲がると、歩く際に足が充分に上がらず、ちょっとした段差でもつまずきやすい。高齢になると転倒して骨折することがあり、最悪、寝たきりになります」

 さらに恐ろしいのは猫背でいることが常態化すると、無意識のうちに骨折するリスクが生じることだ。

「骨密度が低下した状態で前かがみの姿勢をとると、背骨の一部である椎体(ついたい)の前方が潰れる『脊椎(せきつい)圧迫骨折』を引き起こしやすいです。しかも骨折しても自覚がないことが多く、そのままにしておけば無意識のうちに猫背の姿勢が固定されるリスクがあります」(高平さん・以下同)

 猫背によって蝕まれるのは体だけではない。

「膝や腰の痛み、見た目の変化から外出の機会が減ると、健康寿命にも影響します。週1回しか外出しない人は毎日外出する人に比べて、認知症の発症リスクが3.5倍高くなることがわかっています」

 リスクがあるのは、メンタル面も同様だ。小林さんが続ける。

「アメリカの研究では、前かがみの姿勢でいると目から光を取り込みづらくなり、幸せホルモン『セロトニン』の分泌が低下することがわかっている。姿勢が悪くなって浅い呼吸をするようになると交感神経が優位になるので、自律神経のバランスも崩れます」

 体の内外を蝕む猫背。その魔の手から逃れるための第一歩は自覚すること。

「セルフチェック(下記リスト参照)で確認してほしい。例えばバンザイのポーズをしたときに、両手が完全に上がりきらない人は確実に猫背です。正面から写真を撮ったときに、顔だけ前に浮き上がっているように見える人も注意した方がいい」(小林さん)