がん予防に<筋肉>が大切な4つの理由とおすすめ筋トレ4選「がん患者の死亡リスクが3分の2に減少」調査結果も【医師解説】

AI要約

がんの予防や治療に筋トレが効果的であることが多くの研究で示されている。アメリカの研究では週1回以上の筋トレをするがん患者の死亡リスクが33%低いと報告されており、さまざまながんの発症率も下がることが明らかになっている。

筋トレはがんの予防だけでなく、既に発症しているがんの進行を抑える可能性もある。日本でも筋トレががん治療の一環として注目され、最近の研究では週30分の筋トレで9%、週40分で17%のがんの発症リスク低下が報告されている。

筋トレの効能は医学界でも認められ、米国臨床腫瘍学会もがん治療中の患者に筋力トレーニングを推奨するガイドラインを発表している。筋トレは健康維持だけでなく、がん患者の生存率向上にも繋がる可能性が高い。

がん予防に<筋肉>が大切な4つの理由とおすすめ筋トレ4選「がん患者の死亡リスクが3分の2に減少」調査結果も【医師解説】

 医療の進歩によって「治る病気」になりつつあるとはいえ、いまも年間30万人近くが亡くなっている「がん」。医学的根拠に基づくものから迷信に近いものまで、日々さまざまながん予防法が模索される中、驚くほど簡単に取り組めて効果的とされるのが「筋トレ」だ。筋肉が「発症率」や「死亡率」を下げる理由やおすすめの筋トレについて、専門家が解説する。

佐藤典宏さん/がん専門医・帝京大学福岡医療技術学部教授

《筋肉を鍛えるトレーニングマシンに特化した24時間ジム「エニタイムフィットネス」の収益が過去最高に》

《RIZAP(ライザップ)グループが作ったコンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」の会員数が約2年で120万人超え》

 ―ー多くの人がこぞって取り組む「筋トレ」は、体力づくりはもちろん、アンチエイジングからメンタル強化まであらゆる効果があることが、さまざまな研究によって明らかになっている。特にいま医学界が注目しているのは、「がん」に関する驚くべき効能だ。

 帝京大学福岡医療技術学部教授でがん専門医の佐藤典宏さんが言う。

「米国臨床腫瘍学会が2022年、がん治療中の患者に対し“治療に伴う副作用軽減のため、レジスタンス運動(筋力トレーニング)や有酸素運動を推奨する”というガイドラインを発表しました。

 実際、2014年にアメリカで行われた研究では、週1回以上筋トレをしているがん患者は、何もしていない患者と比べて、がんによる死亡リスクが33%も低いという結果が発表されました。

出典/Hardee JP, Porter RR, Sui X, Archer E, Lee IM, Lavie CJ, et al. The effect of resistance exercise on all-cause mortality in cancer survivors. Mayo Clin Proc 2014,89:1108-1115.

すでに発症したがんの進行を抑える作用も

 同じくアメリカで約144万人を対象に行われた大規模調査でも、活発に運動する人はそうでない人に比べて、がん発症リスクが7%低下しました。

 個別のがんにおいても、食道がん42%、肝臓がん27%、肺がん26%、子宮体がん21%と、13種類の発症率が下がることが明らかになっています」

 健康維持における「筋肉」の重要性が広く認知されている欧米では、筋トレをがん治療の一環として取り入れることはもはや常識に近い。日本でも同様の流れが起きつつあると、佐藤さんは話す。

「いまもっとも注目されているのは、2022年の東北大学、早稲田大学、九州大学らによる発表です。

 16の信頼度の高い論文を調査したところ、週30分の筋トレを行うことで、がんの発症リスクが9%低下することがわかったのです。週40分になると、総死亡リスクが17%も下がる。つまり筋トレは、がんを予防するだけでなく、すでに発症したがんの進行を抑えることにも役立つ可能性が高いといえます」(佐藤さん・以下同)