待っているのに「連絡なし」……他人をうっかり放置してしまう発達障害の人に対してできる「最良の対策」とは

AI要約

自閉スペクトラム症(ASD)の夫から連絡がなく食事を待つことに悩んでいた漫画家の野波ツナさんが、パートナーとのコミュニケーション改善策を見つけたエピソード。

グレーゾーンの人々が他者の立場で物事を考えるのが難しいため、定型化やルール化して予定通り行動させることでストレスを減らせる。

大人の発達障害に詳しい滝口のぞみ先生のコメントを交えつつ、自分のために行動することの重要性について述べられている。

待っているのに「連絡なし」……他人をうっかり放置してしまう発達障害の人に対してできる「最良の対策」とは

食事を用意したのに帰宅時間の連絡がない。約束の時間になったのに一言もない。ASD(自閉スペクトラム症)の夫からそんなふうに「待ちぼうけ」を食わされることもよくあった漫画家・野波ツナさんは、ついに誰でもできる「最もいい対策」を見つけたそうです。新刊『発達障害・グレーゾーンのあの人の行動が変わる言い方・接し方事典』からお贈りします。

「あの人」から連絡がないせいでパートナーが待ちぼうけ……というのはよくあるケースです。たとえば、いつもの帰宅時間に合わせて食事をつくっているのに、その時間に帰ってこない。「遅くなるなら連絡を」と言ってあるのに連絡がない、といった状況とか。

今日もパートナーが、「あの人」(ネコ)を延々と待っています。

こういうトラブル、実は私の家でもよく起こっていました。

私は漫画家だから自宅で仕事。かたや夫のアキラさん(後に発達障害があると判明)は、当時はまだ会社員。ご飯を用意するのは私だったので、「帰る時間は前もって教えてほしい」とアキラさんに言ってあったのですが、彼は連絡してくれません。携帯電話のメールで「何時に帰る?」と聞いても、返信してくれませんでした。

〈束縛されるのが嫌なのかな〉と思っていたのですが、あるときアキラさんに「なぜ帰る時間を尋ねても返信しないの?」と聞いてみたところ、こんなふうに言われたのです。

「帰る時間はわかっていますから」

つまり、自分(アキラさん自身)は帰る時間を知っているから、私に教える必要はないと思っていて、だからアキラさんは帰宅時間を連絡してこなかったのでした。

発達障害・グレーゾーンの「あの人」は他者の立場で物事を考えるのが苦手なので、

・パートナーが「連絡が欲しい」と伝えても連絡する必要性がわからない

・「連絡する」と言ったのに、いざとなると忘れてしまう

ということも起こりやすく、周囲の人はしばしば困惑します。

「今日は何時に帰る?」とこちらから尋ねるとか、いつ・何を言うか定型化・ルール化していつでも目に入るようにするなど、いろいろな対策が考えられるので、ぜひ試してもらいたいと思います。

ですが、それでもうまくいかない、もう面倒……と感じたら、「あの人」に返答を期待するのはやめて、「予定を伝えてその通り実行する」ようにします。

つまり、「今日のご飯は〇時」と伝えておき、定刻になったら食べ始めるというルールを決めて、待つのをやめるのです。事前に「〇時になったから予定通り先に食べるね」と、メールなどで「あの人」に一報を入れておくと、なおいいと思います。「勝手に食べた!」と誤解されるのを防げます。

夕食に限らず、何事もそのようにすれば、少しはストレスのもとが減らせるでしょう。この点について、私の新刊の監修者で大人の発達障害に詳しい滝口のぞみ先生は、「自分のため」と考えを切り替える大切さを教えてくださいました。

【滝口先生のコメント】

「食事をつくっておいても、帰ると言った時間に帰ってこなかったり、料理に感想のひとつもないなど、相手のことを思って料理しているのに、『あの人』がそれをわかってくれないというのは相当つらいことで、大きなストレスになります。『自分のため』と考えて、自分の好きなものをつくり、自分自身を大切にするのも大事なことだと覚えておいてください」

後編記事『単なことすらやらず……発達障害の夫が「頼まれたこと」を無視していた意外すぎる理由』へ続く。