5歳児の3%が「自閉スペクトラム症」幼少期の「発見 & 療育」が特性の軽減に 早期発見へ研究進む 専門医が解説

AI要約

自閉スペクトラム症は、日本では5歳児の約3%が診断される症状であり、早期発見が重要である。

最新の研究では、妊娠中の免疫システムの異常が発症に関連していることが分かっており、将来の診断方法に期待が寄せられている。

療育を受けることで、幼い頃から特性を軽減させることができるが、早期発見が鍵となる。

5歳児の3%が「自閉スペクトラム症」幼少期の「発見 & 療育」が特性の軽減に 早期発見へ研究進む 専門医が解説

年々、診断される人が増える「自閉スペクトラム症」。日本では5歳児の約3%が診断されている。思い通りにいかないと癇癪を起こしてしまう、好きなものへのこだわりが強い、話すときに目を見ないなどの特徴があり、うまく付き合っていくためには、できる限り幼い頃に発見することが重要だ。

最新の研究では、妊娠中の免疫システムの異常が発症に結び付いていることも分かってきていて、早期発見に向けての研究も進められている。

「自閉スペクトラム症」とは、自閉症やアスペルガー症候群などをまとめた診断名だ。

長きにわたり子どもを診察している、福井大学子どものこころの発達研究センター・センター長の松崎秀夫教授(※松崎教授の崎は立つ崎)は「昔は発達障害といったが、いまは正式には神経発達症という。コミュニケーションが不得手だったり、特定の物事にすごくこだわりを持ったりする特性を備えていて、社会で困難を感じている人たちを診断するときに使う言葉」と説明する。

自閉スペクトラム症は、80年ほど前にアメリカで初めて報告された、比較的新しい概念だと松崎教授は話す。医療の発達などに伴い世界中で診断される人が増えていて、現在、日本では5歳児の約3.2%が「自閉スペクトラム症」と診断されている。

代表的な特性としては、コミュニケーションが苦手なこと、特定の物事に対してこだわりが強いことなどが挙げられる。五感が鋭い傾向もあり、特定の音や光が苦手で、食べ物の好き嫌いが多いほか、中には触覚が鋭いためにシャワーが浴びられない人もいるという。

こうした特性について松崎教授は「自閉症の子どもは、自分が思い通りにならないと感情を爆発させてしまうことが非常に多く、特に幼少期には、それが原因で育児に手を焼く親の姿がよく見られる。こういった特性は大人になっても続く」と話す。

詳しい原因は分かっていないものの、妊娠中の免疫システムの異常が発症に関係していると言われている。

福井大学などの研究グループは2024年7月、出産直後に採取されるへその緒の血液(臍帯血)の中にある特定の脂肪酸が発症と関係していることを突き止めた。「研究が進めば、この脂肪酸の濃度を測定することで、子どもが将来自閉スペクトラム症の特性を備えるかどうかを予測できるようになる可能性がある」という。

自閉スペクトラム症は多くの場合、小学校での学校生活で周りになじめないことで発覚するが、早ければ2~3歳で診断されることもある。改善に特化した薬は存在しないが、幼いうちのトレーニング=「療育」を受けると、特性は軽減することが分かっている。

療育が効果的なのは遅くとも小学校低学年まで、と松崎教授は強調する。早期発見につなげるサインについては「顕著な子どもだと、明らかに周囲の子どもと遊ばないとか、自分の好きなものだけに固執して並べて遊んでいることなどをきっかけに、外来で診断を受けるケースは多々ある」とする。

乳幼児健診や幼稚園で指摘を受けたり、子どもの行動に違和感があったりする場合は、早めに小児科を受診することが望ましいという。「家族や本人が受診を頭から拒否するケースがあるが、受診したからと言って必ずしも診断をつけるわけでない。受診することに抵抗感を持たず、気軽に来て欲しい」と松崎教授は呼びかける。

こだわりの強さや特化した才能を持つ「自閉スペクトラム症」は、社会に出てから大いに役立てることもできる。上手く付き合っていくためには、家族や学校などの周囲の理解が重要だ。

(福井テレビ)