「女子大に勇気を持って進学する男性を応援したい」 男性看護師を育てる意義【長崎発】

AI要約

看護師不足の問題が深刻化しており、活水女子大学では男子学生の受け入れを通じて男性看護師の育成に注力している。

厚労省の調査では、2025年に必要な看護師数が175万人と推定されており、実際の数はその数万人不足している状況だ。

男性看護師の需要が高まっている現状に加え、実習を通じて男性看護師に対するイメージも変化している。

「女子大に勇気を持って進学する男性を応援したい」 男性看護師を育てる意義【長崎発】

いま問題となっている「看護師不足」。地域医療を維持するためにどのようにして看護師を増やすのか。活水女子大の男子学生受け入れで「男性看護師」が注目されている。社会で活躍する女性を育てる女子大だからこそ「男性看護師」を育てる意義がある。

全国的に看護師不足が叫ばれている。国の調査によると看護師は全国で1,311,687人(2022年度)、10年前に比べると295,943人増えている。長崎でも18,798人で10年前より3,153人増加しているのだ。数は増えているのに、なぜ看護師が足りないと言われるのか。

厚労省は働く環境を守りつつ求められる医療レベルを提供するために必要な看護師の理想の数を出している。2025年は182万人だ。しかし実際に働く人は175万人と推計され、約7万人足りない。

厚労省時代にこの調査に携わった活水女子大学看護学部の野口靜子学部長は「看護師が増えているのは育児を経て再就職するための研修を行ったり、社会人経験者など様々なバックグランドを持つ人も看護師を目指せるよう、看護を学ぶ選択肢を広げた結果だ」と話す。

長崎みなとメディカルセンターで看護部長として勤務していた経験があるという野口学部長。その時に痛感したのは「男性看護師を増やす必要性」だ。

野口学部長は「専門性が必要な看護のスキルを身に着ける際、女性の場合はキャリアを積むタイミングが結婚・出産・育児と重なってしまいがち。一方で男性はキャリアを積みやすい傾向があり、意欲も高い。ただ長崎では高度な看護を学ぶ受け皿が国公立で2カ所のみで他県に流出してしまう。地元で男性が学べる場を増やし、男性看護師も積極的に育成する必要がある」と話し、活水女子大に着任後は男子学生の受け入れを進めてきた。

国の調査によると、2022年度全国の男性看護師の数は112,164人で全体の約1割だ。活水女子大学看護学部で精神看護学を教える平山正晃講師は、精神科病院で14年間勤務した経験がある。

安全が求められる精神科は昔から男性看護師が多く働いている。力仕事のイメージが強い男性看護師だが、医師や薬剤師などと同じく医療の道に進む男性は手先が器用な人が多いという。今では診療看護師やがん専門の看護師といった、専門知識が必要な分野で活躍する男性看護師も多いと話す。

20代の男性看護師は「女性が多いと気は使うが、性別によるやりづらさは特に感じていない」という。むしろ患者によって男性が好まれる場合もあり、男性が多い方が患者の満足度にもつながるのではないかと指摘する。今回の女子大での男子学生受け入れについて「男性が看護を学べる大学が増えるのはうれしい。地元でより深く専門的に学ぶ機会につながる」と男性看護師の立場としても喜ばしいことだと受け止めている。

一方で、看護学部の在校生は学びの場に男子学生が加わることには戸惑いは隠せない。しかし実習に参加したことで男性看護師へのイメージが変化したという。

ある学生は「女性看護師に勝るくらい患者さんに接していた。師長や副師長にも男性がいて活躍していた」と振り返る。実習後は看護師=女性のイメージも変化し、今回の男子学生受け入れに対しても「やっとかという感じ。現場では活躍している人がいるのに、なぜ学びの場にいなかったんだろう」と抵抗感は和らいできた様子だ。

実習先の長崎医療センターの高山院長(※高は「はしごだか」)は「実際、職場環境としては、今はどの診療科も性別は関係なくなっている。世間に男性女性関係なく働いているんだということを伝えていけばいい」と話す。