水を「1時間に1L以上」飲むと最悪の場合死に至る…間違った熱中症対策が引き起こす「水中毒」の恐さ

AI要約

水中毒とは水の飲み過ぎによって引き起こされる病気である。過剰な水摂取により体液が希釈され、重篤な症状を引き起こす可能性がある。

1時間に1リットル以上の水を飲むことは避けるべきであり、塩分を摂取することで水中毒を予防することができる。水分補給は食事から摂取することが基本である。

健康な状態であれば、水やお茶で必要な水分補給を十分に行うことができる。食事をしっかり摂ることで十分な水分摂取ができるため、水分補給は食事から行うのが理想的である。

水はどのくらいのペースで、どのくらいの量を飲むのが正解なのか。医師の谷口英喜さんの書籍『いのちを守る水分補給』(評言社)より、適切な水分補給についての解説をお届けする――。

■水の飲み過ぎで「水中毒」になる

 「水中毒」という言葉をご存知でしょうか。

 水分補給には水が適しているのですが、水だけをたくさん飲んでいると水中毒という病気になる危険性があります。

 水中毒とは、もともとは精神疾患を有した患者が水を大量に(5~10リットル程度)飲水することにより生じる「希釈性低ナトリウム血症」の症状のことです。

 食事をとらずに水ばかり飲んでいると、体液が薄まってしまい、危険な状態になるのです。いわゆる水飲みダイエットでも起きることがあります。

 体液が薄まると、塩分(ナトリウムイオン)濃度も薄まり、意識がもうろうとしたり、けいれんを起こしたりする水中毒と呼ばれる状態になります。

 重症化すると脳浮腫、肺水腫および心不全を起こし、死に至ることもあるのです。

■1時間に1リットル以上の水を飲んではいけない

 理論的には、人間の腎臓がもつ最大の利尿速度は毎分16ミリリットル(1時間に960ミリリットル)であるため、これを超える速度で水分を摂取すると体液希釈が起きるとされています。

 よく見られるシチュエーションとしては、以下があります。

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①スポーツで大汗をかいたのに真水ばかりを大量に摂取

②ダイエットの空腹を紛らわすために真水を大量に摂取(水飲みダイエット)

③下痢や嘔吐の水分補給に真水ばかりを大量に摂取

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■塩分摂取で防ぐことができる

 水分補給として、真水ばかりを大量に(1時間に1リットル以上)摂取することは避けるべきです。

 水中毒は、塩分が含まれた食事や飲料を摂取することで防ぐことができます。

 水中毒の治療は、軽症ならば塩分を投与したり、経口補水液を摂取したりすることでも改善されます。

 意識障害や血圧低下などがある場合には、専門医療機関での治療が必要です。利尿薬と輸液療法の併用、場合によっては透析が必要なこともあります。

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・1時間に1リットルの真水だけをとるのは避けよう。

・水分補給=大量の飲水と短絡的に考えるのは大変危険。水中毒で、いのちを失うことも。

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■水分補給の基本は「食事からとる」

 よく「経口補水液とかスポーツドリンクをふだんから水分補給として飲んだほうがよいのでしょうか?」という質問をされます。

 その答えは「健常時なら水やお茶でも十分な水分補給になります」となります。

 ただし、水ばかり飲んでいると、前述のようにいわゆる水中毒になる危険があります。

 「水分補給の基本は食事からとりましょう」というのが大原則です。

 食事をしっかりとっていれば、1日に必要な水分量の半分を水分としてとります。だから水分の種類については、水やお茶で十分と考えてください。