優雅な宮中晩餐会の舞台裏 皇室と英王室、もてなしに共通の源流 天皇、皇后両陛下ご訪英同行記(4)

AI要約

バッキンガム宮殿で行われたチャールズ国王夫妻主催の公式晩餐会の様子を紹介。

宮殿内の空間や料理、おもてなしの様子について詳細に描写。

日英の共通の源流を感じながら、英王室の心づくしのもてなしを取材した体験を述べる。

優雅な宮中晩餐会の舞台裏 皇室と英王室、もてなしに共通の源流 天皇、皇后両陛下ご訪英同行記(4)

「カンパイ!」

現地時間の25日夜、ロンドン・バッキンガム宮殿で催された、チャールズ国王夫妻主催の公式晩餐会。これまで5回にわたり日本を訪れるなど、日本をよく知る国王の乾杯の発声のあと、約170人の招待者が、一斉にグラスを合わせる音が響いた。天皇陛下は、お隣の国王と乾杯され、皇后さまとカミラ王妃がほほえみをたたえながら杯を上げていた。弦楽器の演奏が、会場の華やかな雰囲気をいっそう盛り上げる―。

こんなふうに書くと、記者もテーブルの末席にいたかのようだが、現実は多少異なる。多くの報道関係者は晩餐会の最中、会場に入ることは許されず、宮殿内の別室に設置された1つのモニターに食い入るようにして中継映像を見守っていた。ただ、会が始まる前に、短時間だが会場を事前取材する機会が与えられた。英王室の心づくしのもてなしの空間を、ほんの一瞬、味わうことができた。

■花に囲まれ、魚と野菜中心のメニュー

「ボール・ルーム」と呼ばれる晩餐会の会場の部屋に入ってまず感じたのは、天上の高さと、優しい花の香りだ。テーブルの上に美しく配置されたバラなどの花飾りは、豪華だが上品な淡い色合いで、香りも食事の邪魔をするほどきつくない。テーブルの中央には、背丈の高いグリーンがあしらわれ、まるで庭園の中にいるような印象を受けた。

英国側の発表によると、バラなどの花は、バッキンガム宮殿やウィンザー城から集めたもので、グリーンは日本でいう「イロハモミジ」の木だという。この木は、行事の後、バッキンガム宮殿に展示するために保存されて再利用されるといい、自然や環境問題への意識の高い、英王室ならではと感じた。

食事は、どんなものが提供されたのか。発表されたメニューを見てみると、▽コーンウォール産ヨーロッパヒラメのフィレのハーブバター焼きレタス包み ▽夏野菜のセレクション ▽ポテトとほうれん草のクリームコロッケ ▽桃のシャーベットを詰めたアイスクリームボム…などが並ぶ。こうしたメニューは、ゲストの好みなどを考慮した上で検討されるといい、今回、肉料理は含まれなかった。

両陛下が国内で、外国からの賓客を接遇する際にも、その国にちなんだ花飾りや音楽、ゲストに喜んでもらえるような食事でもてなされる。最近は両陛下の発案で、海外でも人気のある和食の前菜の提供や、日本酒による乾杯も取り入れられた。英王室の「もてなし」の現場を取材し、日英でその様式や心配りに、共通の源流があることを改めて実感した。