三井不動産、DXの新方針を表明--RAG構築やサイバーセキュリティの強化も

AI要約

三井不動産がDX方針「DX VISION 2030」を発表。人材育成、AI活用、サイバーセキュリティ強化を重視。

方針はグループの長期経営方針に基づき、リアルとデジタルの融合を推進。戦略のインフラと位置づけられる。

具体的な施策として、リアルな場でのデジタルプラットフォーム強化、AI/デジタル人材育成、デジタル基盤整備などが挙げられる。

三井不動産、DXの新方針を表明--RAG構築やサイバーセキュリティの強化も

 三井不動産は8月5日、新しい同社グループのDX方針となる「DX VISION 2030」を発表した。リアルとデジタルの融合による不動産ビジネスの変革に向けて人材育成を進め、AI活用やサイバーセキュリティを強化するという。

 今回のDX方針は、同社が4月に公表したグループの長期経営方針「& INNOVATION 2030」に基づく。ここでは事業戦略として、(1)コア事業のさらなる成長、(2)新たなアセットクラスへの展開、(3)新事業領域の探索・事業機会獲得――を掲げ、今回のDX方針をこれら戦略のインフラの1つと位置付けている。

 DX方針では、(1)&Customer 「リアル×デジタル」ビジネス変革、(2)&Crew AI/デジタル人材変革、(3)&Platform デジタル基盤変革――の3つを掲げる。

 (1)では、グループのリアルな場における顧客との接点やネットワークを生かしたデジタルプラットフォームを強化してリアルな場の価値の最大化を実現するとし、例えば、住宅・商業・ホテルの3事業で2022年にポイント相互利用を開始しているほか、会員ステータスに応じた特典付与などを実施している。また、コミュニティーを活用してさまざまな施設のテナント企業や行政、医療機関などのステークホルダーとの協業にも取り組み、同社の領域を超えた新たなサービス開発とデータ活用を推進していくとする。

 (2)と(3)は、(1)での施策を推進するものになるという。(2)では、10月にDXビジネス人材育成制度を開始し、事業部門の総合職とDX本部のITエキスパート職を対象に「ビジネスインターン制度」と「DXトレーニー制度」を導入する。

 ビジネスインターン制度は、ITエキスパート職が事業部門に6カ月間異動して現場業務に従事し、同社のビジネスの理解を深めることで、ITエキスパート職を、事業成長を担う人材に育てる。一方のDXトレーニー制度は、事業部門総合職が1年間DX本部に異動して、米General Assemblyのデジタル人材育成プログラムを学び、最前線のビジネスで必要とされるDXスキルを習得する。

 また、同社は2023年8月に生成AIを活用した自社特化型AIチャットツール「&Chat」の運用を開始し、「三井でみつけて すまいとくらしウェブ」や東京ドームシティの屋内型子供向け施設「ASOBono!」「AI東京ドームシティ新聞」などにも展開している。2024年度は、さらに検索拡張生成(RAG)環境を社内で開発し、2030年度までに生成AIと従来型AIを組み合わせた環境を自社業務や顧客向けサービスに展開するという。

 (3)では、海外を含むグループ全体でのデジタル環境を整備するとし、特にサイバーセキュリティをグループ全ての事業領域における重要な経営課題と認識し、対策に取り組む。例えば、サイバー攻撃により侵害された端末からその他の端末やITシステムへの侵害の拡大(ラテラルムーブメント)を想定した攻撃態勢評価などを実施することにしている。