中国、生成AI導入で世界トップ 多種多様に浸透

AI要約

中国が生成AI分野で急速な進歩を遂げており、導入率では世界をリードしている。

一方で、米国の企業は生成AIの成熟度において世界トップに位置しており、特許出願でも中国に次いで多い。

中国政府はAI分野に積極的に取り組んでおり、国家標準の制定や国家計算能力の増強を目指している。

 中国が生成AI(人工知能)の導入で世界をリードしていることが分かった。この分野における中国の進歩の速さを示す最新のデータが公表されたと、英ロイター通信がAI・データ分析ソフトの米SASと英調査会社コールマン・パークス・リサーチのリポートを基に報じた。

■ 中国企業、8割超が導入済み

 世界各国企業の最高情報責任者(CIO)や最高技術責任者(CTO)など意思決定者1600人を対象に調査を実施した。これによると、中国の意思決定者の83%が生成AIを導入していると回答した。これは、世界平均の54%を大きく上回り、英国の70%、米国の65%をも上回っている。調査対象となった業界は、銀行、保険、医療、通信、製造、小売り、エネルギー、生命化学、などである。

 この結果は、中国が生成AI分野で急速な進歩を遂げていることを示すという。生成AIは、2022年11月に米オープンAIが対話型AI「Chat(チャット)GPT」を立ち上げて以降世界的に注目されている。こうした動きを受け、中国の数十社が独自モデルを開発している。

 オープンAIなどのグローバル企業が中国で規制に直面する一方、同国では百度(バイドゥ)や字節跳動(バイトダンス)などのテクノロジー大手から、智譜AI(Zhipu AI)などのスタートアップまで様々な企業が参加し、新しい産業を発展させているという。

 今後、中国企業の生成AI導入は一層拡大していくとみられる。価格戦争が企業向け大規模言語モデル(LLM)のコストを下げることがその要因だとSASは指摘する。

■ 成熟度では米国がトップ

 今回のリポートによると、中国が導入率で世界をリードする一方、米企業は生成AIの成熟度において世界トップに位置するという。米企業の24%が生成AIを完全導入しているのに対し、中国企業の完全導入率は19%、英国企業は11%にとどまる。

 コールマン・パークス・リサーチのマネージングディレクター、スティーブン・ソウ氏は「中国が生成AIの導入率で先行するものの、導入率が高いからといって必ずしも効果的な実装やより良い成果につながるわけではない」と指摘する。

■ 生成AIの特許出願、米国の6倍

 先ごろ国連の世界知的所有権機関(WIPO)が公表したリポートで、中国の生成AI分野の特許出願件数が世界で最も多いことが分かった。米国は14年から23年までに6276件の関連特許を出願したが、この期間における中国の出願件数は3万8210件で、米国の約6倍に上った。

 中国と米国に次ぐ3位は韓国で、出願件数は4155件。この後、日本とインドがそれぞれ、3409件と1350件で続いた。出願件数が上位の企業・組織は、中国・騰訊控股(テンセント)、中国平安保険(Ping An Insurance Group)、バイドゥ、中国科学院(Chinese Academy of Science)、米IBM、の順。中国は4組織が5位以内に入った。

 同国は、LLMの開発において、オープンAIや米マイクロソフト、米グーグルに後れを取っているが、最近は巻き返しに力を注ぐ。

 24年5月、中国政府はAI分野の3カ年行動計画を発表した。同年7月には、26年までにAIで50以上の「国家標準」を制定すると明らかにした。AI半導体や生成AIなどの標準化を強化し、国家計算能力の増強を図る考えだ。