中国のブレイン・コンピューター・インターフェイス開発が加速

AI要約

脳の電気活動で動作を制御し、微小電流で脳細胞とコンピューターを「相互作用」させるブレイン・コンピュータ・インターフェイス技術が実用化に向けて進化している。

世界的には、米イーロン・マスク氏率いるNeuralinkや中国の研究チームが技術開発を加速させている。

ブレイン・コンピューター・インターフェイス技術の進展により、障害者の自立支援や産業応用が期待される。

中国のブレイン・コンピューター・インターフェイス開発が加速

【CNS】脳の電気活動で動作を制御し、微小電流で脳細胞とコンピューターを「相互作用」させることで、体の不自由な障害者でも手足を自由に動かすことができるようになる。これまでSFシーンの中でしか登場しなかったブレイン・コンピュータ・インターフェイス技術が、近年、徐々に現実のものとなりつつある。

 世界的には、米実業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏が共同設立した「ニューラリンク(Neuralink)」に代表されるブレイン・コンピューター・インターフェイス企業が商業化を加速させている。そして中国においてもブレイン・コンピューター・インターフェイスの発展は著しく速度を上げている。

 ブレイン・コンピューター・インターフェイス技術とは、脳と外部機器との間に情報チャンネルを作り、中枢神経活動の収集と解読、人の意思の識別と出力、外部機器の操作、フィードバック情報の受信を一連の作業として、閉じられたループ空間の中で人とコンピューターのインタラクション・システムを構築するものだ。この概念が提唱されてからすでに50年が経過している。

 現在、各国が研究開発の高みを目指し競い合っている。研究開発は主に人間の機能障害の補助や修復と人間の行動(運動)能力の増強がテーマとなっている。中国にはすでに多くの研究チームがあり、侵襲的(しんしゅうてき、脳内に電極を埋め込む)、半侵襲的(頭蓋骨に穴を開け、脳膜に電極を装着)、非侵襲的(頭皮に電極を貼る)技術を含む、様々な技術経路で、ブレイン・コンピュータ・インターフェイス・デバイスの研究に取り組んでいる。

 中国は6月末に、ブレイン・コンピューター・インターフェイス・プロジェクトの最新進捗状況を発表した。「天津大学(Tianjin University)脳コンピューター相互作用・人機械包摂・海河(Haihe)実験室」と「南方科技大学(Southern University of Science and Technology)」は共同で、世界初のオープンソースの「オンチップ脳知能複合情報相互作用システム」を開発し、障害物回避、追跡、掴む/握るなどのロボットの無人制御のための「脳」の育成を実現し、脳とコンピューターの融合を目指した様々な作業を完成させたと発表した。

「オンチップ脳コンピューター・インターフェース」とは、体外で培養した「脳(脳のような器官)」を電極チップと結合させて「オンチップ脳」を形成し、コーディングと刺激を通じて、フィードバックを実現し、外部情報との相互作用を構築する技術だ。

「海河実験室」のブレイン・コンピューター・インターフェイス・チームの責任者・李暁紅(Li Xiaohong)氏は「この成果はもはや学術研究の領域にとどまらず、産業界とのより良い結合が期待でき、最終的には商業化が実現できるものだ」との抱負を語っている。

 実際中国ではブレイン・コンピュータ・インターフェイス技術の臨床応用と産業化が加速している。2023年10月、世界初のワイヤレス低侵襲ブレイン・コンピュータ・インターフェイス臨床試験が北京の「首都医科大学宣武医院で成功し、交通事故で手足が麻痺した患者が自律的に水を飲むなどの脳制御機能を実現した。

 浙江大学(Zhejiang University)、復旦大学(Fudan University)、中国科学院深圳先端技術研究院(Shenzhen Institute of Advanced Technology)もまたこの分野で重要な研究成果を上げている。

 米国系の大手コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)は、世界のブレイン・コンピューター・インターフェイスの医療分野への応用の潜在市場規模は、30年に400億ドル(約6兆3036億円)、40年に1450億ドル(約22兆8056億円)に達すると予想している。

 今年中国はブレイン・コンピューター・インターフェイスの産業化のための多くの政策を発表している。1月29日には「未来産業のイノベーション発展の促進に関する実施意見」を発表し、量子コンピューター、ブレイン・コンピューター・インターフェイス、新型ディスプレイ、6Gネットワーク機器の研究開発を強化すると宣言した。

 また7月1日、中国工業・情報化部(MIIT)は「MIITブレイン・コンピューター・インターフェイス標準化技術委員会の設置計画」を発表した。関係企業、研究機関、大学などの産業・技術専門家を招聘し、「三大業務計画」として、標準化のロードマップの最適化、開発の優先順位/キーとなる技術標準の策定、標準の実施と普及に取り組むとしている。

 注目すべきは、新たな技術としてその安全性と倫理問題に直面していることだ。

 中国政府は2月に「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス研究のための倫理指針」を発表した。法令遵守、社会的・科学的価値、インフォームド・コンセント(十分な情報が提示される前提での医師と患者の合意)、個人情報保護、リスクコントロール、資格要件、責任メカニズムの七つの具体的要件を提示している。(c)CNS/JCM/AFPBB News

※この記事は、CNS(China News Service)のニュースをJCMが日本語訳したものです。CNSは1952年に設立された中華人民共和国の国営通信社です。