顔パスで入退室や社食での決済が可能に――、NECがデジタル社員証や顔認証技術を本社ビルで本格稼働

AI要約

NECがデジタル社員証や顔認証技術を活用した働き方DXの取り組みについて説明会を開催。

デジタル社員証の利用や経営マネジメントの高速化、AIトランスフォーメーションなどに焦点を当てた取り組み。

NECは社員のエンゲージメント向上やDX事業の展開に注力し、テクノロジーを活用して社内外のサービス連携を強化している。

顔パスで入退室や社食での決済が可能に――、NECがデジタル社員証や顔認証技術を本社ビルで本格稼働

 日本電気株式会社(以下、NEC)は10日、7月より本格稼働しているデジタル社員証や顔認証技術による社員向けサービスについて説明会を開催した。

 デジタル社員証は、本社ビルの社員2万人を対象に発行した。これにより、従来のプラスチック製の社員証を持たなくても、顔認証にて勤務管理システムと連携した本社ビルの入退場や、社員食堂・売店などでの決済、オフィスでの複合機やロッカーなどのサービスが利用できるようになる。

 NECでは、デジタルIDや生体認証、生成AIなどの先進テクノロジーを活用した働き方DXの取り組みを強化し、社員のエンゲージメント向上とデータドリブン経営のさらなる加速を目指している。今回のサービスはこの取り組みの一環となる。

 NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CIO 兼 コーポレート IT・デジタル部門長の小玉浩氏は、「現在NECでは、全社エクスペリエンス変革として、人の力を解き放つ働き方のDX、データドリブン経営とマネジメント変革を目指した営業・基幹業務のDX、そしてITの力を最大化する運用のDXに取り組んでいる。この3つを軸に、2025中期経営計画の目標であるEBITDA成長率年平均9%という数字の実現と、社員のエンゲージメントスコアを50%にまで高めることを目指したい」と説明した。

 特にエンゲージメントスコアについては、2019年には19%という低さだったという。そこで、DXの取り組みにより社員の自律を支援し、成長し続けられる環境を構築、現在では39%にまで上昇した。「テクノロジーだけでなく、働く環境や制度と仕組みを一体にして、エンゲージメントスコアの向上に取り組んでいる」と小玉氏は語る。

 今回NECが働き方DXとして強化するのは、デジタルIDや生体認証などによる社員エクスペリエンスの向上と、「経営コックピット」というダッシュボードによる経営マネジメントの高速化、そしてあらゆる領域にAIを浸透させるAIトランスフォーメーションだ。

 デジタル社員証は、マイクロソフトが提供する分散型ID技術とNECの生体認証技術を組み合わせたもの。「デジタル社員証を軸として、どこからでもみんながつながるようなワンチームの仕掛けを用意し、すぐにコラボレーションできるようにした。また、生体認証のデータを取り込み、働き方やオフィスのあり方、警備の手法などをアップデートしていきたい」と小玉氏。現在は本社ビルでのみ展開しているデジタル社員証と連携したサービスを、今後はほかの事業拠点にも拡張するという。

 デジタル社員証と社外サービスとの連携も強化する。その第一弾として、デジタル障がい者手帳「ミライロID」との連携を開始。今回の説明会では、社内で車いすの社員をランチタイムにサポートする仕組みについてデモが行われた。ミライロIDに登録した車いすの社員は、顔認証決済により障がい者手帳がなくても障がい者割引を受けることができ、サポートする社員も同時に割引が受けられるという。

 経営コックピットは、経営層から社員まで同じデータを活用し、アクションへとつなげることを目的に用意したダッシュボードで、2023年5月に本格稼働した。全社のプロセスとデータを標準化した上で、財務や人事、ITといった10の領域で92種類にわたる経営情報を可視化するという。

 AIトランスフォーメーションについては、「あらゆる業務にAIを浸透させ、AIが持つパワーをフル活用することで、生産性を大幅に向上させる」と小玉氏。2023年5月からは同社グループ内で生成AIサービスの提供を開始し、自社開発の生成AI「cotomi」はもちろん、グローバルパートナーの生成AIも組み合わせ、現時点でのべ4万5000人が社内生成AIサービスを利用しているという。また、営業支援システムなど社内167のシステムとも連携しており、継続してシステム連携や機能の拡充を進めているほか、AIカルチャーを促進するため社員が作成したアプリやプロンプトなどのノウハウを共有するポータルを用意、活用事例のコンテストなども行っている。

 NECでは、5月30日にDX事業の新ブランドとして「BluStellar(ブルーステラ)」を発表しており、今回の取り組みのナレッジも同事業に組み込んでいく考えだ。小玉氏は、「今回の取り組みでは、当社が自ら最初のクライアントとなって生きたナレッジをレファレンス化し、顧客や社会のDXにもつなげていきたい」と述べた。