“福島第1原発”廃炉へ「大きな一歩」“燃料デブリ”3グラム取り出し着手に成功…廃炉見込みは2051年見込む

AI要約

福島第一原子力発電所2号機での燃料デブリ取り出し作業が再開され、廃炉への大きな第一歩が踏み出された。

取り出し作業の中断や再開の経緯、作業の危険性、成功の意義、そして今後の展望が明らかになっている。

燃料デブリの取り出し作業に成功すると、分析が行われ、廃炉へ向けた戦略が立てられる。2051年を目指して作業が進められる見通し。

“福島第1原発”廃炉へ「大きな一歩」“燃料デブリ”3グラム取り出し着手に成功…廃炉見込みは2051年見込む

原発事故から13年半が経過した9月10日、廃炉への最大のハードルに新たな動きがあった。

福島第一原子力発電所2号機で、事故で溶けた核燃料などが冷えて固まった燃料デブリの取り出し作業が再開された。廃炉の見込みは2051年を見込んでいるが、専門家は「“着手”と東京電力は言っていますが、それができたことが大きい」と述べ、廃炉への大きな第一歩と評価した。

燃料デブリの取り出し作業は、東京電力社長が4日、所管する経済産業大臣に謝罪する曰(いわ)く付きのものだった。

東京電力・小早川智明社長:東京電力のトップとして、心よりお詫びを申し上げます。

斎藤健経産相:これまでの認識と行動を徹底的に改めるとともに、工程管理や確認をしっかり行うよう強く求めたい。

中断した理由は初歩的な単純ミスで、ロボットを格納容器の中に押し込む棒の順番が間違っていた。その原因は、作業を途中で中止したことを、次の日の作業員に引き継いでいなかったため。

しかも、東京電力も現場を確認せず、1カ月ほどミスが放置されていたことも分かった。

東京電力は、8日までにミスのあった棒を正しい順番に接続。9日は、小早川社長自らが現場の確認を行った。

そして、中断から約3週間後の10日、東京電力は試験的取り出し作業に着手した。

2週間以上かけて、3グラム以下の燃料デブリを試験的に取り出す今回の計画。10日7時20分に、格納容器の内部に向けてロボットを投入する「着手」に成功した。

原発がある福島・双葉町の住民は、「原子炉の廃炉に向かって、進んで行ければいいかなと思います」と前を向いた。

宮司愛海キャスター:

廃炉の「最大の難関」とされる「燃料デブリ」の取り出し作業ですが、どういったものなのか? 原発に詳しい東京大学大学院・工学系研究科の岡本孝司教授と見ていきます。よろしくお願いいたします。

岡本孝司教授:

よろしくお願いします。

木村拓也キャスター:

きょう作業が行われたのは福島第一原発2号機です。

格納容器の中には、燃料デブリと呼ばれる、原発事故で溶けた核燃料などが冷えて固まったものがあります。

宮司キャスター:

この燃料デブリを何とか取り出そうということですが、燃料デブリは放射線量が高く危険なものなんですよね? 

岡本教授:

燃料デブリは、小さくてもとても放射線量が高く、数分で致死量に達する。作業員のいる外側の部分でも東京の1万倍くらい放射線量が高いため、長時間は作業できない。格納容器の中は人間は作業できないので、ロボットによる取り出し作業が考えられている。

木村キャスター:

この燃料デブリは、1~3号機を合わせると約880トンにのぼるということです。今回は格納容器の底にある燃料デブリのうち、小石状のものをひとつぶ取り出す計画。放射線量が高くなりすぎないよう、重さを3グラム以下に抑えるとしています。

宮司キャスター:

具体的にどう取り出すんですか?

木村キャスター:

ロボットの器具を格納容器に投入し、吊り下ろしていき燃料デブリを取り出します。

10日の作業は午前6時半から準備が開始され、2時間程度行われた。

午前7時20分に格納容器の内部に通じる配管の途中まで装置を入れて、燃料デブリの試験的な取り出しに着手したと発表した。

木村キャスター:

デブリへの到達・採取までには1週間程度、回収の完了までには2週間程度かかるということです。

宮司キャスター:

きょうの「着手成功」はどれぐらいスゴいことなのでしょうか?

岡本教授:

格納容器の中が危険なのですが、その中に装置を入れることができた。そのことを「着手」と東京電力は言っていますが、それができたことが大きな一歩なんです。

宮司キャスター:

最大の難関と言われるが、具体的にはどういった点が難しいのでしょうか?

岡本教授:

とても危険なものである「燃料デブリ」を取り出して容器に入れる。“取り出す”こと自体が危ないので、基本的にロボットが作業をする。ロボットが作業して安全に保存する、その全般の作業が困難であるということ。

山口真由SPキャスター:

放射線量が高い燃料デブリの取り出し、もし取り出しに失敗した場合、どんなリスクがある?

岡本教授:

今回はわずか3グラム程度なので危険性はなく、環境への影響もないのでやり直せばいいということになります。

宮司キャスター:

取り出しに成功した場合、その燃料デブリはどうするのでしょうか?

木村キャスター:

2週間かけて取り出した燃料デブリはその後、茨城県にある大洗研究所で分析されるということです。

宮司キャスター:

分析というのは、具体的にどういった内容でしょうか?

岡本教授:

電子顕微鏡などを使って構造を調べる。今まで推定しかできていなかった燃料デブリの結晶構造などが見えてくると思われ、どのようにしてデブリができたかなどの情報が分かります。そうすれば、“取り出す”戦略が立てられるわけです。

宮司キャスター:

燃料デブリは1号~3号機で約880トン。全部取り出すのにどれぐらい時間かかるでしょうか?

岡本教授:

時間はある程度かかるのですが、まずは取り出して中の状況を知る。まずは敵を知ることで、残りの約880トンはある程度の期間で取り出すことができると期待しています。

宮司キャスター:

それが2051年、ひとまずは廃炉を目指していくということですね。

(「イット!」 9月10日放送より)